追走曲・13話途中、試合終了直後の話

 試合終了のホイッスルが鳴り、花音は得点を確認してガッツポーズを取った。立ち上がってパスをくれた風丸へ向くと、彼は近寄って来て花音とハイタッチを交わす。
「さすがだな、柑月」
 腕を組んで笑う風丸に、「風丸くんこそ、ナイスパスだったよ!」と花音がサムズアップした。と、一瞬風丸が目を丸くし、ニヤリと微笑んで花音を見る。
「試合中は呼び捨てだったじゃないか。今更『くん』なんて付けなくたって良いさ」
 そうだったっけ、と頬を掻く花音に、風丸が「その方が呼びやすいだろ」と言った。すると、「それなら」と近くに居た染岡も続く。
「全員呼び捨てでいいじゃねえか、怒る奴なんて居ねーよ」
 試合に勝ったからかすこぶる上機嫌な染岡は、腰に手を当てて大きく笑った。彼等に促されるようにして、花音も小さく微笑む。
「じゃあお言葉に甘えちゃおっかな?」
 ふふ、と笑った花音が「改めてよろしくね。風丸、染岡!」と2人に呼びかける。試合中無意識に呼んでいたとはいえ、慣れない呼び方に少しだけ頬が熱くなった。
 花音の照れが移ったのか、風丸と染岡も少し目を逸らす。余計に恥ずかしくなった花音は、チームメイト全員に労いの言葉をかけて回っていた円堂を見つけて呼び止めた。自棄になって「守!」と呼んでも動じない円堂に、恥ずかしがっている自分が気にしすぎな気すらしてくる。
「花音もお疲れ!良いシュートだったぜ!」
 太陽のように笑う円堂に、嗚呼彼には一生勝てないんだろうなと納得した花音だった。
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -