22話 1/2

 全国大会のレベルの高さに戸惑う雷門イレブンは、戦国伊賀島中の技に翻弄されてやや劣性だ。前半戦は相手のシュート・つちだるまに1点を許し、終了した。
「はい、しっかり水分補給してね。」
 ハーフタイム中、木野から差し出されたドリンクに円堂が手を伸ばす。受け取った円堂が少し顔を顰めたのを、風丸は見逃さなかった。
「円堂、見せてみろ」
 意表を突く形で円堂の腕を掴み、キーパーグローブを剥ぎ取った。腫れ上がった円堂の手が露わになる。周りで見ていた皆もあんぐり口を開けるほど、見るからに痛そうだ。
「こんな状態でゴールを守ってたのか!」
 風丸が心配そうに言うが、円堂は手を引っ込めて言う。
「心配すんなって!これ以上絶対ゴールは許さない。」
 それが痩せ我慢であろうことは、誰の目から見ても明らかだった。
 木野の丁寧な処置を受け、円堂は再びグローブを着ける。「円堂を全力でカバーしよう!」と風丸がチームに呼びかけ、皆がそれに答えた。
 後半戦は風丸のキックオフで始まった。花音はいつもならサイドハーフの位置に立つことが多いが、今回は後ろに下がって守備に努める。
 戦国伊賀島中の猛攻が始まり、押して押されての繰り返しになる。激しいボールの奪い合いの末、霧隠が風丸のディフェンスを破り切り込んできた。
「しまった…!壁山止めろ!」
 風丸の叫び声に狼狽えながら、壁山がゴール前に立ちはだかる。円堂の他に自分しかいないと気づいて腹を決めたのか、「絶対通さないッス!」と飛んできたボールを跳ね返した。
 安堵したのも束の間、零れたボールを霧隠が素早く拾う。再び鋭く攻め込んで、シュート技・つちだるまを放った。
 流石のスピードでゴール傍まで戻ってきた風丸が止めに入る。しかしあと1歩のところで及ばず、ボールは風丸の横をすり抜けた。
「ゴッドハンド!」
 円堂の勇ましい叫び声が響くが、健闘虚しくボールの勢いに押し負けてしまう。ゴールへボールが飛び込もうとした瞬間、風丸が身を呈してそのボールを受け止めた。
 ボールを保持した風丸が、トップで機を窺っていた豪炎寺と共に駆け上がる。戦国伊賀島中のディフェンス技もそのスピードで振り切り、ゴールまで突っ切った。
「炎の風見鶏!」
 豪炎寺と風丸のシュートが見事ゴールを破る。降り立った2人が満足そうにハイタッチを交わした。
「もう1点」
 花音は思わず呟いて、周囲に目を配る。先程抜かれたのが余程ショックだったのか、霧隠は風丸を撤退的にマークしていた。戦国伊賀島中の選手達も、これ以上の失点を防ごうと守備に力を入れる。
 風丸にボールが渡った。霧隠は負けじと追いかける。「このままじゃ終わらせない!」と叫ぶ彼に、風丸も「勝負だ!」と霧隠を煽った。
 霧隠が肩を入れて風丸にタックルをする。スタジアム中の注目が集まる2人を横目に、花音は密かに前線へ駆け上がった。
「お前の速さじゃ俺を振り切れない!」
 言いながら霧隠が風丸のスピードに並ぶ。風丸はタッチライン際まで寄せられながらも、「足が速いだけじゃダメなんだよ、サッカーは!」と強く言い放った。そのまま少し上にボールを蹴り上げ、霧隠の意表を突いて方向転換する。
 フリーになった風丸に、花音は手を上げてボールを寄越せと視線を送った。後半戦中ずっと後方に居た花音に、戦国伊賀島のマークも甘い。風丸も、良い位置でボールを通すことができると即座に判断した。
「花音っ!」
 オフサイドギリギリの位置で、花音は風丸のボールを受けた。胸でトラップしたボールを蹴り上げ、シュートモーションに入る。
「ウンディーネ!」
 DFに遮られることなく、シュートはゴールへとまっすぐ飛び込んでいく。スムーズなシュートへの流れに対応しきれず、戦国伊賀島のGKごとゴールネットへ押し込んだ。
 試合終了を知らせるホイッスルが鳴り響く。花音は上機嫌で拳を掲げた。

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