07話 1/2

 サッカー部顧問の冬海に入部届を提出し、花音は正式に雷門サッカー部に入部を果たした。遂に始まるフットボールフロンティア地区予選に、円堂を始め、サッカー部の士気は盛り上がる。転校生の土門の入部も決まり、今までになく部室が賑わっていた。
 初戦の相手は野生中。昨年のFF地区予選決勝で、帝国学園と戦ったチームらしい。意気揚々と練習を始めたサッカー部に水を差すように、グラウンドに来訪者が現れた。
「ちょっと、柑月さん?」
 予期せぬ呼びかけに、マネージャーとして練習の様子を眺めていた花音は振り返る。そこに立っていたのは、雷門中理事長の娘であり生徒会長でもある雷門夏未だった。
 凄みすら感じる雷門の笑顔に花音がたじろいでいると、練習の一環で消防車に登っていた円堂が声をあげる。
「どうしたんだ?」
 円堂の声に他のサッカー部面々も静まり返る。部員にとってはサッカー部廃部を持ちかけられたことも記憶に新しく、注目度が高いらしい。対して、雷門は臆する様子もなく言葉を返した。
「今日は柑月さんに用があるの。あなた方サッカー部には関係ないわ。」
 要件に心当たりのある花音は、嫌に落ち着いた雷門の態度に冷や汗をかく。サッカー部の視線を集めても堂々と怯まない雷門に、しかし「関係ない」と切り捨てられた円堂は「そんなことないさ」と反論した。
「花音はサッカー部員だし、関係はある。」
 庇うような発言はありがたいが、これから話す内容が内容なだけに素知らぬふりをして欲しかった、と花音は心の中で涙する。
 推察するに、よくよく苦言を呈されている任介のバイクの件だろう。今日からサッカー部の練習に参加する旨は伝えてあったが、チラリと横目で校門を見るといつもと変わらぬ黒いバイクが確認できる。
 依然として部員の注目は雷門にあり、その前に立つ花音は今すぐにでも逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。
「…まあ私は別に構わないけど。」
 雷門が肩を落として呟くと、改まって花音に視線を向ける。「じゃあ柑月さん」と呼び掛けて話し始めようとする雷門の声を遮って、花音は雷門の腕を引いた。
「分かりました、理事長室まで伺いましょう!円堂くんごめんね、ちょっと行ってきます!」
 花音の唐突な行動に円堂が首を傾げたが、雷門はそれでも余裕そうな、嫌味な笑みを浮かべている。その表情から花音の反応を楽しんでいるらしいことは明らかで、呆気に取られる周囲との反応の差に頭痛すら覚えそうだ。
 それじゃあ、と言い残して走り出す花音に引っ張られるようにして、雷門はグラウンドを後にした。

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