30話 1/3

 翌日、筋肉痛を誤魔化しながら練習を終えた花音は、サッカーボールを抱えて河川敷に向かおうとしていた。特訓をしていないと心が落ち着かないが、連日修練場を借りると雷門に心配されるのが目に見えている。かといって校庭では目立つだろうし、1人でも出来るシュート練習に適した場所を、花音は河川敷以外知らなかった。
 正門を抜けたところで、花音はふと足を止める。昨日、遅くなりすぎて酷く心配されたため、任介と涼に軽く連絡取っておいた方が無難だろう。鞄からケータイを取り出しメールを送る。2通送り終えたところで、背後から声が掛かった。
「花音、追加の練習か?」
 振り返ると声の主・豪炎寺と鬼道が並んで歩いていた。花音は手元のボールを見つめ、「ちょっとだけ」と笑顔を作る。花音の前で2人は立ち止まり、今度は鬼道が口を開いた。
「これから鉄塔に行くんだ。円堂の練習を見に行くんだが、花音も行かないか?」
 そこで一緒に練習すればいい、と言った鬼道に、花音は暫し考えてから「そうだね」と笑う。
 内心、今は1人で居たいという気持ちもあった。しかし、木野や雷門が心配している円堂の姿を思い浮かべると、流石に放ってはおけない。
 2人の後に続き、花音は円堂の無茶な練習に付き合うこととなった。

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