24話 1/3

 遂に千羽山イレブンとの試合の日。鬼道が雷門イレブンのベンチにやってきた時、会場からブーイングの嵐が巻き起こった。実況解説者が読み上げる大会規約によれば、転校による移籍は問題ないらしい。納得いかない様子だが、一応会場内の声も沈静化する。
「世宇子には必ずリベンジする」
 強く言い切った鬼道に、円堂は嬉しそうな声を出した。歓迎の意を表す円堂に対し、雷門イレブン内には未だに割り切れない気持ちを抱える者も居るようだった。
 試合開始後、練習に引き続きパスが通らない雷門イレブンは千羽山中に先制点を許してしまう。しかし、10分でチームの身体能力を把握した鬼道が修正指示を出し、徐々にいつもの調子を取り戻していった。
 鬼道はパスが通らなかった理由を「実力向上の個人差によるもの」と言い、自分はそのズレを見つけて調節しただけだと話す。簡単に言ってくれるが、10分でそれを見抜き、更にそれを指揮するなんてなかなか出来るものではない。
 段々と鬼道を受け入れチームの雰囲気も明るくなってきた雷門イレブンだが、前半は千羽山中のディフェンス技「かごめかごめ」とキャッチ技「無限の壁」に阻まれ、無得点のまま終了した。
 ベンチに戻った一同に、鬼道が後半の作戦を伝える。
「後半は染岡のワントップで行こう。確かに無限の壁は脅威だが、弱点はある。」
 鬼道の説明では、無限の壁はGKとDF2人による連携技のため、染岡がデコイとしてDFを離れさせれば技は使えなくなるという。確かに、染岡はガタイもよく勢いもあるため、千羽山ディフェンスを掻き乱すにはもってこいの囮だ。
 鬼道の話に一同が納得しかけた時、半田が食ってかかった。
「そんなの俺達のサッカーじゃない!豪炎寺と染岡のツートップ。それが俺達のサッカーだろ!?」
 雷門イレブンとしてずっと戦ってきたが故の意見に、鬼道は極めて冷静に反論する。
「ここはフットボールフロンティア、全国の強豪が雌雄を決する全国大会。…そしてそのピッチに、今お前達は立っている!もう‘お仲間サッカー’など、している場合じゃない。お前たちは全国レベルなんだ!」
 鬼道君の喝に静まり返った。少しばかりキツい言葉だが、この場所に立つ為に必要なことだと皆が理解した。
 場を固めるように、豪炎寺が染岡に「頼んだぞ」と短く声を掛ける。染岡は少し戸惑いつつも、親指を立てて請け負った。
「やってみようぜ、半田。」
 円堂が半田に優しく呼び掛ける。半田は渋々ながら納得し、不貞腐れたように俯いた。
 後半戦を前に、ポジションに向かう波の中で花音はそっと半田に近寄り声を掛ける。
「ね、信じてみようよ。鬼道を…鬼道を信じるみんなを。」
 不本意そうに同意する半田に笑い掛け、花音は気持ちを新たにピッチへと急ぐ。

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