16話 1/2

 サッカー部の練習を終え、送迎車で帰宅した花音はふと違和感を感じた。先に帰宅していた任介が暖かく迎えるが、相変わらず玄関に涼の靴はない。花音がリビングへと踏み入ると、違和感は確信に変わった。
 涼の荷物がなくなっている。それでいて任介が何も言わないということは、恐らく彼も承知の上なのだろう。花音はまるで自分だけ仲間外れにされたような気がして、内心しょんぼりと肩を落とした。

 翌日、花音は初めて学校をサボった。自分でも何がそこまでショックだったのかは分からなかったが、物事に集中できなくなっていたからだ。訳を話して任介に心配されるのも申し訳なく、朝は何食わぬ顔でいつも通り家を出た。人通りの少ない内に学校の裏、目立たない場所で送迎車を降りると、こっそりと丘を登って鉄塔広場へと抜けた。
 ベンチに寝転がり、空を見上げる。学校を自主的に休むのは初めてだったが、正直あまり気持ちの良いものではないと花音は思った。一応、クラス担任には電話で休むことを伝えてあるが、悪いことをしている気持ちがずっと消えない。
 色々な物事が頭を巡り、しかしどれもしっかりと考えられないまま時間が流れた。遠くに学校のチャイムの音が聞こえ、花音が身を起こす。
 何時限めのチャイムだろう。そういえば、お腹が減った気がする。何もしなくても腹は減るんだな、と長いため息を吐いた。
 荷物を手に取ろうとして、花音はケータイに連絡が来ていることに気がつく。木野から体調を心配する内容の連絡に、休みの訳は家の用事ということにして返事をした。それからもう1通、別の差出人からの連絡に、花音が驚く。
 豪炎寺からの連絡だった。内容は至ってシンプルで、『どこでサボってるんだ?』と問われている。花音はドキッとして辺りを見回した。もちろん誰の姿も見当たらない。
 慌てて『何で知ってるの?』と返信すると、すぐに返事が返ってきた。
『任介さんから連絡があった』
 何故2人が連絡先を交換しているのか、花音はますます事態がわからなくなる。困惑する花音に構わず、豪炎寺は再度『どこにいる?』と聞いた。
『鉄塔広場に居るよ』
 返信をして、花音はお昼ご飯を食べようとしていたことを思い出す。ベンチから立ち上がり、大きく伸びをして荷物を背負った。

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