13話 1/3

 秋葉名戸学園の決まり、それは、「マネージャーは常にメイド服を着用すること」。
「…どうして私がこんな格好を…」
 メイド服にはしゃぐ木野と音無とは打って変わって、激しく身悶える雷門の姿がそこにあった。3人はフリルが目を引くメイド服を着用している。
「似合ってるけどなあ…」
 雷門のメイド服姿を見て、花音は小さく呟いた。花音は雷門中ジャージと、中にはユニフォームを着用している。
 少年サッカー協会の検討会の結果、花音は秋葉名戸学園戦から公式試合に出場することが出来るようになった。少年サッカー協会会長であり、雷門の父でもある雷門総一郎理事長はもちろん、副会長なども賛成して円満に会議が進んだらしい。中学卒業までと期限付きではあるが、花音は男子サッカーに混じることが可能となった。
「こ、柑月さん…あなたは着ないのかしら…?」
 こうなったら道連れだと言わんばかりに雷門が花音に笑いかける。その手にはもう1着、メイド服が握られていた。
「嫌だなぁ、なっちゃん。私、今日からなっちゃんのおかげで選手としてサッカーが出来るんだよ?」
 花音も満面の笑みで、雷門に返す。二の句が継げずに黙り込む雷門から逃げるように、花音はアップを始めた。

 スターティングメンバーに選ばれ、花音はご機嫌でコートへと踏み出す。同じく意気揚々とポジションにつく目金は、トレードマークの眼鏡をキラリと輝かせた。
 それはつい先程のこと。最後のメンバー選びに円堂が言葉を詰まらせた時、目金は力強く立候補した。「彼等のサッカーが理解できました」と言い切った目金は、いつになく胸を張っていた。
 秋葉名戸学園ボールで試合が始まる。が、全く攻める気のない姿勢に、雷門イレブンは戸惑うばかりだ。秋葉名戸イレブンの意味不明な言動に不意をつかれボールを奪い取れないでいるうちに、前半戦は終わりを告げた。
「これは僕も予想外でした。」
 目金の発言に雷門中ベンチに不安が募る。花音がふと相手ベンチへ視線を向けると、秋葉名戸学園の選手達は一心不乱にゲームに打ち込んでいた。

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