12話 2/2

 公式試合出場をかけた実技テストを受けた花音は、思っていたより簡易なそれに拍子抜けしていた。内容は基礎的な動作の速さや正確さを確かめるもので、少年サッカー協会の委員による動画の撮影も行われた。他の選手等の姿はなく、花音1人のために委員達数人が雷門中まで足を運んでいることもあり、「もしかして申請者数自体多くないのかな」と花音は思っていた。これらの記録を元に再度検討会が行われ、早ければ週末までに合否の返事が来るらしい。
 テストを終え、部活に遅れた花音が急いで部室へと向かうと、丁度集まった皆が部室から出てくるところに鉢合わせた。その全員が誰一人としてユニフォームを着ていなかったため、不審に思った花音が首を傾げる。
「あれ、練習は?」
 そんな花音の手を引いて円堂は校門の外へと歩き出す。なんでも、次の対戦校である秋葉名戸学園の生徒が足繁く通う店があり、その偵察に向かうのだという。店の外装は美少女の絵で飾られていて、花音にはサッカーとは無縁に思えた。その不思議な雰囲気に緊張すら覚える。
 一歩踏み出した円堂に、後ろに続く部員達も続いた。
「いらっしゃいませ、御主人様!」
 高い声が響き、フリルの多いメイド服姿の女性がにこやかに接客をしてくれる。花音は涼が今日居なくてよかった、と今更ながらに思った。
 今日は学校で用事があるらしく、涼からどうしても行けないと連絡があった。練習終わりには迎えにきてくれるらしいが、まさか練習をせずにこんな場所に居るなんて夢にも思わないだろう。
 メイド服のウエイトレスが持ってきたメニュー表に目を通し、またも一同に緊張が走る。慣れない部員達を差し置いて、目金が平然と注文をした。その余裕そうな様子に、店内に居た他の客が彼に話しかける。曰く、見所があるらしい。
 見せたいものがある、と案内される目金に連れられて、部員達はメイド喫茶地下へ到着する。そこにはゲームやプラモデル、コスプレなど様々な趣味に興じる少年達がいた。
 あんぐり口を開けている皆を置いて、目金は目を輝かせる。あちこちで感想を述べ、少年達と盛り上がる目金を暫し呆然と見ていたが、少しして正気を取り戻した円堂が彼を静止した。
 そして、彼等こそが次の対戦相手・秋葉名戸学園サッカー部だと判明し、地下室に叫び声が響き渡った。

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