11話 1/3

 雷門中対御影専農中の試合が始まった。試合開始のホイッスルと共に豪炎寺と染岡が素早く走り込む。そのスピードの向上には特訓の成果が感じられた。対する御影専農中は微動だにしない。が、2人がFWの横を通り抜けた途端、DFとMFがボールを保持している豪炎寺をマークした。豪炎寺が咄嗟にボールを渡し、染岡はシュート技・ドラゴンクラッシュを放つ。しかし相手GKのキャッチで、それは簡単に止められてしまった。
 機械的で無駄のない動きの御影専農中に、イナビカリ修練場の特訓を耐え抜いた雷門中が食らい付いていく。
 雷門中の猛攻が始まった。ファイアトルネードを、お次はドラゴントルネードを、更にイナズマ落としを、とシュート技のラッシュが続く。雷門中の動きは以前までのそれよりも格段に速くなっていた。
 一方、御影専農中のGKも無駄なくシュートを防いでいく。そのままカウンターに繋いで、ゴール際溢れたボールを押し込んだ。
 先制を許した雷門中に、追い討ちをかけるかのように御影専農中が戦い方を変えた。攻め込むことをやめ、低い位置でボールをキープする。正確なパス回しに、雷門中はボールに触れることすらできない。御影専農中の1点の後、これといった起伏のないまま前半戦は終了した。

 後半、再び味気の無い戦いが始まった。
 全然攻めない相手に、DF陣もさぞ暇だろう、と花音が雷門中ゴール側に視線を送る。すると、ゴールの守護神であるはずの円堂が果敢にも前線へと飛び出して来ていた。
 勢い良く走り出すキャプテンに、相手はもちろん、こちらのチームメイトも度肝を抜かれている様子だ。円堂が放ったシュートは決まらなかったものの、花音は凄く楽しいサッカーが垣間見えた気がした。 円堂の突飛な行動に、御影専農中は戸惑いを隠せない。段々と機械的な動きが狂い始めた。
 円堂が、御影専農中FWのシュートをギリギリで弾く。相手のコーナーキックを横目に見ながら、豪炎寺が円堂に上がるよう指示をした。すぐに相手FWにボールが渡り、さすがの円堂も豪炎寺の声を信じきれない様子だ。それを見越してか、豪炎寺はまたも楽しげに叫ぶ。
「止まるな!シュートだ!!」
 急な要求に、円堂が驚きの声をあげた。豪炎寺は自信に満ちた声でまた言う。
「俺を、信じろ!!」
 相手FWが強力なシュートを蹴った。対して豪炎寺と円堂は、御影専農中のシュートを押し切る形でボールを蹴り返し、今までに見たこともないシュートを放つ。戸惑う相手GKを他所に、ゴールネットが揺れた。
 初めての得点にベンチも沸く。更に勢い付いた染岡と豪炎寺のドラゴントルネードが決まった。
「負けたくない…負けたくないんだ!!」
 相手GKの叫びがフィールドにこだまする。ベンチに居る花音の心さえヒリつくような、白熱したバトルが繰り広げられていた。
 残り時間もあと僅か。豪炎寺がシュートのモーションを取る中、相手のFWも前進しだした。ボールを掠めようと伸ばした足が、ボールを挟み豪炎寺との激しい蹴り合いになる。余りの勢いに、2人供地面に叩きつけられた。
 溢れたボールが相手GKに渡る。彼は円堂の動きに感化されたのか、雷門中ゴールへとまっすぐに上がっていった。
 円堂の前に相手GKが立ちはだかる。彼の決死のシュートは、間一髪で円堂に止められた。
 ここで試合終了のホイッスルが響く。2-1、雷門中サッカー部の勝利だ。
「やりましたね!」
「やったね!」
 喜び合う音無と木野から離れ、花音はフィールドで未だ起き上がらない豪炎寺の元へ向かった。
「豪炎寺くん、」
「大丈夫だ。」
 花音が手を差し伸べてもそれを制して立ち上がろうとする。しかし彼の強がりは、眉間に寄せられた皺が濃くなるばかりでまるで未完成だった。
「嘘吐き。」
 困り笑いを浮かべ、花音は豪炎寺に肩を貸した。

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