10話 1/4

 急に倒れたこともあり、花音は週末の対野生中の試合を欠席することとなった。精密検査の結果、自律神経障害による比較的問題の少ない失神だろうと分かり漸く花音は解放される。尤も、原因はどうあれ打ちどころによっては最悪のケースも考えられるため、過保護な任介と涼の監視は続けられていた。
 試合は1対0で雷門イレブンの勝利、と木野から連絡が入る。花音は第一試合突破の嬉しさ半分、立ち会えなかった悔しさ半分の微妙な心境だった。
 涼は花音について、倒れた原因がハッキリしないため暫く運動等は様子を見るべきだ、と主張する。任介も珍しく涼の意見に賛同した。花音はこれ以上入部したてのサッカー部を休みたくなかったが、自分の我儘を通すには流石に分が悪い。1日がかりで2人を説得し、なんとか「涼の監視の元、サッカー部の活動に参加する」という形で譲歩を引き出した。
 早速、雷門中に問い合わせ、部外者往訪のための申請を行った。涼自身中学生な事もあり、特に問題もなく数日で申請が通る。華美な服装を避け、初日に雷門にだけ話を通してもらえれば問題ないと返答を得た。
 申請待ちの間は念のため学校を休むこととなり、結局サッカー部の活動には数日間参加できなかった。
「失礼します。」
 放課後、涼を引き連れて理事長室の扉をノックする。返答を待って中に入ると雷門が部屋の中程に立っていた。
「あら、柑月さん。…数日学校を休まれていたそうだけど、体調はもう大丈夫なのかしら?」
「うん。えっと、その関係で…」
 花音が扉へと視線を送ると、扉の影から涼が一歩理事長室へと踏み入れた。慣れた様子で深々としたお辞儀をする。
「一応、来訪の申請は出したんだけど…こちら、私のいとこの涼。」
「各務涼です。お嬢がお世話になっております。」
 涼が顔を上げ、意志の強い瞳で雷門を見た。その表情が任介にそっくりで、花音は今更ながら2人の血の繋がりを感じる。
「急な失神もありましたので…暫く学校への同行をお許し願います。」
 聞き取りやすい声で涼が言い、雷門も「そう」と相槌を打つ。送迎と放課後の部活動見学だけということを確認し、雷門は「ご自由にどうぞ」と美麗に笑った。
「でも、丁度良かったわ。」
 雷門が嬉しそうに手を合わせ、花音へと視線を合わせる。そのまま雷門は扉の方へと歩み寄り、花音の前まで来るとまた口角を上げた。
「柑月さん、ちょっと来てくれるかしら?」

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