20話 2/2

 ボールが高く跳ね上がった。豪炎寺と風丸も跳び上がり、しかし息を合わせて蹴りだすことはできなかった。
 花音は着地に失敗し地面に倒れ込む2人を見ながら、数分前のことを思い出す。
 イナズマイレブンのシュート技に見覚えがあった円堂が、試合を中断して雷門イレブンを集めた。特訓ノートのページを捲り、円堂が嬉しそうに言う。
「あったぞ、炎の風見鶏だ。」
 常人には凡そ読むことの出来ないそれを円堂が読み上げる。
「この技はスピードがびゅーん、ジャンプ力がびよよーんか。」
 擬音語の多さに一同が苦笑いし、代表して木野が「相変わらずの宇宙語ね」と肩をすくめた。
 スピードという言葉に反応して、風丸が名乗りを上げる。ジャンプ力の高い豪炎寺と合わせて、2人で炎の風見鶏を打つことになった。練習試合を再開し、何度も2人が駆け上がる。
「焦るな!俺達にも必ず出来る!」
 円堂の応援に、2人も力強く頷いた。
 もう一度、イナズマイレブンのお手本・炎の風見鶏がゴールを割る。悔しがる円堂とは裏腹に、ベンチから試合を見ていた影野がコートへと駆け寄った。
「この技の鍵は、2人の距離だよ!」
 何かに気づいたらしい影野が豪炎寺と風丸に解説をする。花音はポジションに戻りながら、横目にそれを見ていた。
 染岡のキックオフで試合再開後、すぐに松野が前線にボールを繋ぐ。ボールを受け取って再度跳び上がった豪炎寺と風丸が、今度こそ炎の風見鶏を完成させた。
 喜び勇む雷門イレブンに、花音も負けてられないと息を巻く。果敢にゴール前へ切り込み、シュートを放った。
「ウンディーネ!」
 響木の指先を掠りながら、ボールはゴールへと吸い込まれた。やった、とガッツポーズして、花音は得意げに響木を見る。楽しげに笑った響木は、「やるな、柑月」とボールを投げて寄越した。
「次の試合こそ、絶対出してもらいますよ!」
 花音がセンターサークルへボールを運びながら言い残す。不意に河川敷の上に掛かる橋に、見慣れた黒い二輪を見つけた。
「任にい!」
 思わず叫んでからはっと口を押さえる。花音が周りを窺うと、雷門中サッカー部が不思議そうな顔をしていた。
「花音、どうかしたか?」
 円堂が尋ねる。花音は躊躇いがちに、「兄が見に来てて」と苦笑いした。彼女の視線の先を追ったらしい誰かが、「あれって柑月のお兄さんだったのか…」と黒いバイクを見て溢した。半ば自棄になった花音が、任介に力強いピースサインを送る。しかし任介の反応は存外鈍かった。
「任にい…?」
 首を傾げる花音を他所に、任介は遠い目をして花音を見つめていた。

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