20話 1/2

 地区予選決勝を終えた翌日、雷門中サッカー部はささやかな祝賀会を行った。花音はサッカー部に断って、騙すような形で涼を呼び寄せ仲直りをさせた。かなり強引ではあったが、雷門中サッカー部ーー特に染岡とのわだかまりは解けたようだった。
 更にその翌日、響木監督の計らいで伝説のイナズマイレブンと練習試合をする事になった。いつもの河川敷のサッカーコートに集まった、齢50を過ぎたおじさん達に熱い視線が集まる。
「夢みたいだ…イナズマイレブンとサッカーが出来るなんて!」
 円堂が一等期待の込もった声を洩らした。審判にと鬼瓦まで呼んでいて、体制は万全だ。
「いいか!今日は胸を借りるつもりで思い切りぶつかっていこう!」
 ゴールを背に、円堂が拳を握った。雷門中サッカー部が元気よく返事をする。花音もまた、コートの中で声を合わせた。
 鬼瓦がホイッスルを鳴らし、試合が始まる。しかしその内容は、期待していたものとは大きくかけ離れていた。
 年齢もあり動きにキレがないのは仕方ないにしろ、プレーに粗さが目立つ上に緊張感がまるでない。サッカー部一同が徐々にがっかりしていくのが肌で分かる程、イナズマイレブンの動きは悪かった。
 口惜しそうな円堂に「これで分かっただろ」とイナズマイレブンの浮島が声を掛ける。
「伝説のイナズマイレブンは、もう存在しないんだ。」
 諦めたような口振りに、一抹の哀しさを孕んでいた。
「伝説なんて関係ないよ。どうしていい加減なプレーをするのさ!こんな、魂の抜けた試合して!おじさん達が大好きだったサッカーに対して、恥ずかしくないの!?」
 円堂は怒りを隠そうともせず、真っ直ぐ浮島を見つめて叫ぶ。少しの間、河川敷が静まり返った。
 その後も、雷門中サッカー部の攻撃にイナズマイレブンは手も足も出ない。豪炎寺のファイアトルネードがゴールネットを揺らした。
「お前達、なんだその様は!」
 響木が見かねて声を上げる。ボールを小脇に抱え、チームメイトを叱責する姿は熱いサッカー少年のようだった。
「俺達は伝説のイナズマイレブンなんだ。そしてここに、その伝説を夢に描いた子供達がいる!」
 右手で雷門イレブンを指差し、響木は続ける。
「俺達にはその思いを背負う責任があるんだ!その思いに答えてやろうじゃないか、本当のイナズマイレブンとして!!」
 珍しく感情的な響木に、イナズマイレブンも雷門イレブンも呆気に取られた。
 イナズマイレブンの士気が高まる。まるで雷にでも打たれたように、その瞳が輝きはじめた。
 イナズマイレブンのシュート・クロスドライブが円堂の熱血パンチに打ち勝った。染岡のドラゴンクラッシュを、響木のゴッドハンドが止める。
 加速しはじめた試合に取り残されないように、花音も必死に食らいついていった。

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