15話 2/2
雷門が冬海を追い出したことで、サッカー部に顧問及び監督が居なくなった。土門も部員達と打ち解けどうにか波は去ったかと思われた。が、そうもいかないらしい。
フットボールフロンティアの規定により、監督不在のチームは参加出来ないという。次の試合までに監督を探さなくては、雷門中は失格になってしまうらしい。新監督探しが始まり、一同は豪炎寺の提案により雷雷軒を訪ねた。
結果は惨敗だった。取り付くしまもない程見事に突っぱねられてしまう。
新監督が見つからない雷門中サッカー部は、次の試合に出られなくなるのではと不安が煽られ練習に身が入らない。
花音はというと、昨日の騒動から涼が柑月別邸に帰って来なかったことで頭がいっぱいだった。涼はあんなことを言った手前、花音と顔を合わせづらいのだろう。しかし住み込みで身の回りの世話をしていただけに、涼の荷物は柑月別邸にある。様々な面で不便があるだろうが、そうまでして花音に会いたくないのかと少し寂しく思った。
「鬼道さん…各務…!」
不意に、河川敷の傍にある橋を見上げて土門が呟いた。花音が振り返り視線の先を窺うと、鬼道と涼が河川敷を見下ろしている。
2人に駆け寄る円堂とは裏腹に、サッカー部全体の雰囲気は悪かった。「不戦敗寸前の僕達を笑いに来たのかもしれませんよ」という目金の言葉に、花音の胸も締めつけられる。
「涼…」
小さく溢した花音の声に反応するように、涼がこちらを向いた。花音と視線が合うと、目を伏せてから円堂へと向き直ってしまう。
円堂と鬼道の会話は、河川敷で不安げに見守る一同には聞こえなかった。暫くして、鬼道が円堂に背を向け歩き出す。円堂は手をあげて、「きっとだぞ!約束な!」と嬉しそうに大声で叫んだ。鬼道は振り返らず、しかし右手を上げてそれに応える。涼はその後を追いながら、もう一度、横目でチラリと河川敷を見下した。
「アイツら、何だって?」
雷門中サッカー部の元へと帰ってきた円堂に、染岡が聞いた。円堂は清々しい声で「今度一緒に練習する約束してきた。」と答える。騒めく部員達の輪には入らず、音無は走り去るタクシーを目で追って、物悲しい表情を浮かべていた。