31話 2/3

 響木の発案により、雷門サッカー部は中学校で合宿を行うことになった。円堂は反対したが「今のお前は必殺技のことで頭が凝り固まっている」と諭され、渋々提案を受け入れた。
 5時に再集合、と言い渡されて各々一度帰宅する。花音は急な外泊に過剰に心配を寄せる任介や涼をいなして、なんとか準備を済ませた。シャワーを浴びて再出発する。
 花音が学校へ戻り、体育館へ踏み入れる頃には、床一面に敷布団が並べられていた。あちらでは1年生達が枕投げを、こちらではお気に入りの寝具談義を、といった具合に、皆が和気藹々と過ごしている。
 今しがた到着した円堂が、渋い顔をしているのがわかった。おおよそ試合直前とは思えない雰囲気に、花音も内心迅る気持ちが助長される。こんなことしてる場合ではないと思う反面、響木は何か考えがあるのではとも思っていた。

 晩御飯のカレーの支度を終え一息ついたところで、トイレに行ったはずの壁山が「お化けが出た」と駆け戻ってきた。付き添っていた影野によると、確かに大人の影を見たのだという。しかし合宿の監督をしている大人達は皆、円堂達と共にグラウンドに居た。では誰が、と雷門イレブン達が考えを巡らせる。影山やその手下が入り込んでいるのでは、という声があがり、正体を暴くために校舎へと向かった。
 暗がりの中で不審な人物を追い詰めた円堂達だったが、近寄ってその姿を確認し驚きの声をあげる。それは見覚えのある商店街の面々、イナズマイレブンOBのおじさん達だった。
 話を聞けば、合宿の応援に駆けつけてくれたらしい。
「アレを持って行って驚かしてやろうってね。」
 したり顔でそう言うと、イナズマイレブンOB達は40年前のトレーニングマシンを見せてくれた。
 マジン・ザ・ハンド養成マシン、と呼ばれたその機械は、人力でベルトコンベアと障害物を動かすものだった。
 錆び付いて重いそれを豪炎寺、鬼道、一之瀬、染岡が必死で回し、円堂の特訓を手伝う。余りの重労働に息も絶え絶えとなる4人を見て、円堂が「休憩するか」と声をかけた。その様子を見守っていた壁山、栗松、宍戸、少林寺が立ち上がる。自分達も手伝いたいという声があちらこちらからあがった。
 マジン・ザ・ハンドの完成を願うチームメイト達の姿を見て、円堂はふと目を丸くする。
「何やってんだ、俺は。こんな仲間がいたのに、マジン・ザ・ハンドが出来ないからって1人で焦って。俺は世界一の大バカ者だ!」
 嬉しそうに笑う円堂を受けて、花音はチームの気持ちがひとつになったのを感じた。

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