28話 3/4

 ハーフタイム中、ベンチで給水する雷門イレブンに、木野の激励が飛ぶ。
「みんな頑張って!三兄弟と中盤の連携を崩せば、必ず逆転できるわ!」
 しかし鬼道は、「奴等も後半は修正してくるだろう」と落ち着き払って言った。
「それに、まだあの技を出していない。」
 豪炎寺が重々しく言うと、今度は一之瀬が「トライアングルZか。」と真剣な目をする。凄いシュートらしい、ということだけ聞かされている花音は、まだ見ぬ必殺技に思いを馳せた。
 豪炎寺に対して並々ならぬ対抗心を燃やす武方三兄弟なら、必ずその技を打ってくるだろう。
「このまま終わるはずがない。」
 低い声で呟いた豪炎寺の言葉に、雷門イレブンの面々は表情を暗くする。静まり返ったベンチに、「大丈夫さ!」という力強い円堂の声が響いた。
「どんなシュートだろうと、俺が必ず止めてみせる!」
 流石のリーダーシップに、花音は思わず笑みをこぼす。逆境を力に変えてきた円堂だけに、その言葉には説得力があった。

 後半開始早々、武方三兄弟が速攻を仕掛けてきた。駆け上がる彼等に雷門イレブンが反応しきれないまま、トライアングルZがゴールへと向かう。すかさずゴッドハンドを繰り出す円堂だったが、その勢いに圧されてゴールを許してしまった。悔しげに掌を見つめる円堂がやけに印象的だ。
 反撃にと再度トライペガサスを狙う円堂達だったが、木戸川清修DF・西垣のスピニングカットに阻まれる。弾いたボールがラインを割り、ベンチの面々が不安に息を呑んだ。
 試合再開後、雷門陣内に切り込む三兄弟の前に、豪炎寺が立ちはだかる。不意をついてボールをカットした豪炎寺が、染岡に声を掛けつつそのまま駆け上がった。しかし、2人のドラゴントルネードは木戸川清修GKによる必殺技・タフネスブロックに阻まれ弾き返されてしまう。雷門イレブンの顔に落胆の色が浮かんだ時、それを見越してゴールに寄っていた豪炎寺が溢れ玉を拾った。すかさずファイアトルネードで押し込んで、またしても雷門中が同点に並ぶ。
 白熱した試合展開に、会場内の熱気も高まっていく。一進一退の試合運びに、しかし刻々と時間が過ぎていった。残り時間もあと僅かとなった時、事態が動く。
「俺達は勝つんだ!」
 凄い気迫で駆け込んでくる武方三兄弟が、雷門イレブンの守備の隙をついてノーマークのままトライアングルZを放った。絶対に取られたくない場面でのシュートに、皆が悲痛の表情でボールの行方を追う。
 円堂がゴッドハンドで応戦するが、勢いの強いシュートにまたもゴールへとずり下がっていく。絶対絶命の場面で、栗松と壁山が動いた。
「キャプテン!」
「危ないッス!」
 2人は円堂の背後へと回り、彼の背を支える形でゴールを守り切った。そしてすぐさまマークが手薄になっていた豪炎寺へ、ロングパスを通す。
「行かせない!」
 その執念から、武方三兄弟が驚異的な速さで豪炎寺を追った。つい先程ゴール前にいたはずの彼等が豪炎寺の行く手を塞ぐ。しかし豪炎寺は、あっさりと一之瀬にパスを出した。
「行け、決めるんだ!」
 驚く一同に豪炎寺の指示が飛ぶ。円堂が駆け出して、一之瀬、土門、円堂が配置についた。
「トライペガサスは決めさせない!」
 即座に西垣がスピニングカットでボールを奪いに来る。けれど走り出した3人は、青く揺らめく炎を抜けて煌々と燃える不死鳥を生み出した。
「うおおおお!」
 3人が雄叫びを上げながら蹴り出したフェニックスが、身を呈して止めに入った武方三兄弟を跳ね除けてゴールへ飛び込む。
 2-3、雷門イレブンの逆転と共にホイッスルの音が鳴り響いた。

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