対ジャパン戦に敗退し、パパは救われた。フィディオ・アルデナが行った、パパのお父様である影山東吾の動きを模したプレーでパパの気持ちがはっきりしたのだ。パパはサッカーが好きで、自分は罪を犯したのだと自ら認めた。
その時、パパが気にかけていた金髪の女の子がパパに声をかけた。私はパパに駆け寄った。
パパは私の頭を撫でてくれた。けれど、それきり。私に声をかけてくれない。トントン拍子で話は進み、パパは鬼瓦という刑事の車に揺られまた監獄へ行ってしまう。
怖かった。また居場所が無くなってしまう。でもパパは言った。

「会いに来てくれるか、おなまえ。」

私は嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、泣いた。泣きながら頷いて、パパに思いきり抱きついた。
護送されるパパを見送る私へ、鬼道くんは寄ってきて他愛もない話をした。
それは長い間敵対していたとは程遠く、昔想っていたなんて匂わない、本当に何でもない会話だった。きっとお互い傷に触れてほしく無くて、けれど繋がっていたくて、手の届くギリギリの範囲で手を繋いだような、そんな会話だった。
私は鬼道くんに言った。

「私、鬼道くんが大好きだよ。不安を抱えていた時、まるでお兄ちゃんみたいに優しい鬼道くんが好きになった。…でも、もう終わっちゃったね。私、鬼道くんをマネジメントする以上に大切な事が出来てしまった。」

鬼道くんは何も言わずにゴーグルの向こうで目を閉じる。
私はもう慣れてしまった。目を伏せる事、目を逸らす事、嘘にも、真実にも。だから私は笑うのだ。

「パパが好きなの。だってパパは、私を愛してくれる。パパが私を見てくれる理由が、パパが鬼道くんを失ったからでもいい。私愛されるならそれでいい。」

鬼道くんの妹が悲しげに私を見る。知ってるよ、君に無くて私にあるもの。君は親に殺す気で殴られた事が無いだろう?君は確か、親に捨てられた事も無かったんだっけ。鬼道くんも君も愛されている。だから、君はそんな悲しい目を私に向けるんだ。
鬼道くんは私に言った。

「また会えるよな、おなまえ。」

私は泣きたくなった。

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