ジャパンとの戦いが明日に迫った。初めはそれこそ荒れ模様だったパパとチームオルフェウスとの関係も、信頼とまではいかないが否定的な目線は確かに減った。少しだけフィディオ・アルデナのお陰なのが、悔しい。
私はパパの部屋のドアをノックした。返事を受けてから部屋に入る。かき集めてきた書類をパパの机に置いた。
ジャパンとの対決。…鬼道くんとの、エンドウと姓の付く少年との対決。それはどうやらパパにとっても、少なからず私にとっても大きな意味を持つようだ。
いつも以上に入念な試合プランの組み直し、シミュレーション。少しだけパパが楽しそうに見えるのは、果たして気のせいなのだろうか。
私はパパの邪魔をしてはいけないと踵を返す。 ドアノブに出掛けた時、ふとパパは私に言った。

「大きくなったな、おなまえ。」

それは今までのどんなパパの言葉より、柔らかく優しい一言だった。私は何か言い返そうとパパを返り見て、しかし色のついたレンズの向こう、その瞳を見て怖じ気づく。私の知っているどんなパパより神聖な気がした。

「…これからも、パパの隣で、私は大きくなるよ。」

やっと吐き出した言葉はチープだった。けれど、私の願いの全てはそこにある。
いつか大きくなって――鬼道くんにそうしたかったように――パパの背を支えられたら。そこに私の価値が生まれたら。
それはきっと幸せな事。そう思うのに、私の邪魔をする私も居る。
パパの言いたい事が少しだけ分かっていた。きっと自由だとか、やりたいようにだとか、そういった単語を並べたいんだ。だけどパパは私の意思を履き違えている。私はパパの娘でありたい。

「勝とうね、パパ。」

私は影山おなまえでありたい。

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