ついにこの時が来てしまった、と私はデモーニオくんから目をそらす。
チームK対オルフェウスの試合はオルフェウスの勝ち。そしてその試合の途中で力を出し尽くしたデモーニオくんに拒絶反応が現れる。
世界大会に参戦するつもりだったのだから、確かに薬物の投与は無い。だがそれよりも強力な外的刺激を筋肉に与え、無理して身体を育てたのだ。その分のツケが回って彼は視力を無くした。そういうところだろう。
デモーニオくんさえ、遂にパパの駒でなくなってしまった。哀れな彼の姿に目を細めつつパパの様子を伺う。

「イナズマジャパンの君達が、こんなところに居て良いのかな?」

パパの言葉を受けて備え付けられている巨大なスクリーンの電源を入れた。着々と試合の準備が進められるスタジアムの様子が映り、鬼道くん達がどよめく。

『日本代表イナズマジャパンVSアルゼンチン代表ジ・エンパイアの試合が行われようとしています』

画面に映るチームメイトの姿にジャパンメンバーが目を見開く。予定では明日行われる筈だった所を今日にしたのだ。これでは鬼道くん達は試合には間に合わない。

「試合は3時からだ。そこでイナズマジャパンが負ける姿をゆっくりと見ているんだな。」

不敵に笑ったパパがグラウンドを去る。その背中を追おうとした私に、彼が声を投げた。

「おなまえ…」

「…デモーニオくん。」

声だけではまだはっきりと方向を掴めないのか、不安そうな表情で少し顔を横に振っている。すまなさそうに佇んでいるのは私の期待に応えられなかったからか。

「行かないで、くれ…。」

ぐっと奥歯を噛み締める。ここで彼の手を取ったなら、かつて鬼道くんの元から去った意味がない。それに私はパパの娘だから。

「デモーニオくん…私、敗者には興味ないの。」

例え彼に見えなくとも、他の幾つもの目が見ている。
私は彼に微笑んで、パパを追った。
もう、鬼道くんには私が必要でない。いいや、こんな試合なんてしなくともそれは最初から分かりきっていたではないか。
あんなに楽しそうにサッカーをする鬼道くん。私の入る隙間なんて初めからなかった。

「良いのか、おなまえ。」

宿舎の門を抜けると門にもたれかかるようにしてパパが待っていた。サングラスに写り込む私。しっかりと頷く。

「私、パパを愛してる。」

その言葉に偽りはない。

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