やはりと言おう。鬼道くんは現れた。
「帰って来たか…鬼道、私の作品よ。」
パパの言葉に衝撃を受た様子の鬼道くん。頃合いを見計らって私とデモーニオくんも姿を現した。
「おなまえ…!」
何度目かの反応にそろそろ「芸がない」と笑ってもいいだろうか。目を瞬かせる一同に小さく手を振る。初めて出会った濃いオレンジ色のバンダナをした少年にも一礼をして。
「一応自己紹介を。私は影山おなまえ。ここに居るパパの、娘です。」
パパ、娘。違わない。私は笑う。
視界の端で鬼道くんが眉根を寄せる。ゴーグルなんかでは覆い隠せないような、恐くて鋭くて、哀しそうな顔。
やっぱり鬼道くんとデモーニオくんは、似ているようで全く別人だ。いくら似せようとも本人にはなれない。目指す側は目指される側に追いつく事こそあれ、追い抜く事は叶わない。…追い抜いた途端にそれは目指される側とは全く似て非なる、別のものへと変わってしまうのだから。
「それではいい試合を。オルフェウスの皆さん?」
そうやって強情を張るしか、今の私が弱さを隠す事は出来なかった。
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