チームオルフェウスとチームKがイタリア代表の座を賭けて、明日、戦う事となった。パパがどこかへ消えたのを幕切れに私はベンチに座り込む。
さっきから嫌な予感がしていた。胸を圧迫するようなこの気持ち。ギリギリと食い込む爪と震える腕。そして、僅かに感じる鬼道くんの気配。
勿論私に広範囲の気配を読むような力など備わってはいないし、鬼道くんの居場所が分かる筈がない。けれどパパの嫌に嬉しそうな表情がこの気持ちに拍車をかける。
鬼道くんが現れる気がする。
確かなものは何ひとつない。あくまで‘気がする’だ。でも気のせいなんかじゃないと声が響く。近い。近い。近い。

「おなまえ」

不意に肩に置かれた温もりに私が跳ねた。振り向けばデモーニオくんが居る。

「あ…どうしたの?」

「…いや。」

何も言わずデモーニオくんは私の隣に腰を下ろす。その横顔がいつもより苦く渋い表情で、やはり彼を思わせる。
本当に鬼道くんが現れたとして。彼とデモーニオくん、どちらが強いのだろう。いいや、これは私の視点から置き換えるなら、「私のマネジメントした鬼道くん」と「私のマネジメントのない鬼道くん」どちらが強いのか、そうなる。更に言うなら鬼道くんに私が必要か、否か――。
必要とされないのは、辛い。望まれないのは、苦しい。
私の心を分かってか、デモーニオくんが震える手を握った。

「大丈夫だ。負けるはずがない。」

なら、いいんだけど…。
鬼道くんと良く似た姿で、デモーニオくんが私を慰める。この現実自体が私の慰めなのだ。鬼道くんを失った私の慰め。

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