「…最近は数値が安定してる。今日のメニューはこれよ。」

私は厚い紙の束を目の前の少年に渡した。ドレットヘアーにゴーグルと、どこかで見たことのある装備。しかし彼があくまで模したものでしかないのは、きっとパパも分かっているはずだ。

「デモーニオくん…」

パパが彼を連れてきたのはもう随分と前のことだ。その姿に、その表情に、その行動に、いつも鬼道くんを重ねている私が居る。
きっと鬼道くんがパパに反発をしなかったなら。こうやって私は世界のフィールドで彼をマネジメントしていた事だろう。見られなかった夢の続きを悲しく、よりリアルにしたみたい。結局私は縋ってしまっているんだ。幸せだった時に。いいや、幸せだと感じていたい心に。

「頑張って…」

似合わない笑顔を浮かべる。笑顔の先でデモーニオくんがセンチメンタルに微笑んだ。

「ああ…越えてみせる。」

ごめんね。
デモーニオくんが私を見ている。それは少し前から気づいていた。そして私が彼に鬼道くんを重ねている事を、デモーニオくん自身分かっている事にも。それでも私は鬼道くんの影に縋る事を止められそうにない。デモーニオくんの優しさにつけ込んで。
下唇を噛んだ。デモーニオくんが駆けていく。
さっきの私の言葉。あれは果たして彼に言ったのか、はたまた鬼道くんへ向けたのか。私にすら分からないのだから、デモーニオくんが真実に気づくはず、ない。

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