世界のフィールドにのし上がった有力な優勝候補の彼等を、簡単に言えば乗っ取るために立った立場だ。進むべき道の過程。それ以上は何もない。筈だったのに。

「おなまえ?」

しかし彼は私の邪魔ばかりする。
私の顔を覗き込んだ彼、フィディオ・アルデナ。彼はオルフェウスのキャプテンで、リーグ得点王。白い流星とかいう二つ名を持つ少年だ。どうしてか、私は彼を好意的に捉える事は出来ない。
わかっている。端から見れば私が曲がっているだけなのだ。それでも彼の言葉、行為、視線全てが偽善に見える。あるはずのない仮面の裏を探してしまう。

「おなまえってば」

「煩いな、聞こえてるよ。」

溜め息混じりに扱っていたノートパソコンを閉じる。彼の視線を誤魔化すように彼に目を向けながら、音もなくUSBを引き抜いた。

「返事してくれても良いんじゃないかな。」

一方的に。一方的に押し付けられる会話に。私はやはり苛立ちを隠せない。分かってる、おかしいのは私だ。
返事の代わりに彼を睨みつけた。彼もまた、パパの計画を潰しかねない。まっすぐな瞳が私達には邪魔なのだ。

「影山はどこ?」

「…パパなら、他のエリアに行ったわ。明確な場所はわからないけれど。」

だからもう、話しかけないでくれるかな。
その感情が鬼道くんに向けていたものに掠って、苦しかった。

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