嫌な夢見で目が覚めた。泣き叫ぶ。
私のパパはパパだけだ。他の奴はパパではない。認めない。けれど先程の夢の中では違う男が私の名を呼び、自らの子供のように手を引いた。しかしそれは他者の目の届く範囲だけ。家庭に帰ればすぐさま拳が飛んでくる。
いいや、あれはパパなんかじゃない。私のパパは、パパは…

「おなまえ?」

ノックと共にドアの外から声がした。まだ幼さの残る少年の声だ。恐らくは例のキャプテンだろう。あの偽善的な仮面が私は好かない。

「大丈夫?何か叫び声が聞こえたけど…。」

表情の見えない彼が何を考えているのか、私には伺う事が出来ない。いや、例え顔を突き合わせていたとしても彼の考えを読み取る事は私には不可能だろう。彼の言葉は高潔で博愛的だ。偽りだとしても、とても私の口からは吐けない。反吐が出る。

「大丈夫。夜遅いわ。早く休んで。明日の練習に響いたら…」

ドアが開かれた。顔を覗かせた彼に私の苛立ちが募る。

「本当に大丈夫?おなまえは無理するから、」

「何がわかるの」

つけあがるのもいい加減にしてほしい。分かった振りして、いらない偽善をふっかけて。心配そうに見えるその表情がどれだけ私の不快感を刺激するかも知らないで。
白い流星だかリーグ得点王だか知らないけれど、私にとってはパパが広げたボード上の駒に過ぎない。

「でも、」

「出て行ってくれない?それとも夜中に異性の部屋にズカズカ入り込むのがあなたの善意なのかしら、アルデナくん?」

「…それは…。」

ドアを閉めて、立ち去って。私はもう一度彼に言った。渋々とした様子で彼がドアを閉める。
訪れた静寂に下唇を噛む。ここに来て、彼と会ってから昔の事を思い出してばかりだ。でも、どうして…?
嫌な予感をひしひしと感じながら、私は再びベッドに横になった。

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