御焼香を済ませてパイプ椅子に座り直した。通夜と比べて参列者が多い、極一般的な葬式だ。昨日よりクラスメイト等が増えている。たくさんの雷門中制服が並んでいて、全校朝会か何かと間違われそうではある。
私は意識を葬式から外し、母さんが言っていた言葉を考え始めた。円堂くんが死んだ理由だ。何故円堂くんが死ななければならなかったのか。本当なら円堂くんではなく…。
考えれば考えるほど苦しくなって、そこで思考は自主規制された。意識を戻し、隣の風丸くんを盗み見る。私が風丸くんの隣に座ることに疑問を覚える人も居る。私達が古い友人だと知る人は少ない。
幼稚園の3年間と小学校始めの4年間。私と風丸くん、円堂くんは同じクラスで、名前で呼び合う仲だった。元々近所だったのもあるが、2人が一癖あるとされる私の性格を受け入れてくれた数少ない人達だったからだ。しかしその関係も5年生にあがった頃に変わってしまう。
思春期というものが到来した。異性である彼等と私の仲自体は変わらなかったが、なにぶん周りからの目が気になるお年頃。更に拍車をかけるように、私はクラス替えで1人違うクラスになった。
それから2年間、小学校を卒業するまで彼等とは会話をしなかった。故意にではない。する必要がなかったのだ。やがて中学生になり、円堂くんと同じクラスになって、そしてやっと円堂くんが私にとって特別な存在だと気づいた。だがそれに気づくには少し遅かった。
私も円堂くんも、互いにクラスメイトとして程度にしか認識しなくなっていたのだ。私は彼を円堂くんと呼び、彼は私を苗字で呼ぶ。一見すると何の変哲もないクラスメイト。それでいて実は昔仲の良かった人。
円堂くんが木野さんとサッカー部を設立したときも、私には参加する資格も勇気もなかった。
御焼香に立っていた少女が振り返る。目が合った気がした。
私は彼女を知っている。けれど、私の隣に座る風丸くんや他のクラスメイト達は彼女を知らないようで、それでも身に纏われた雷門の制服を見て首を傾げていた。
見覚えがないのも当たり前。彼女は身体が弱く、まともに学校に登校していない。私が彼女を知っているのはただの偶然。怪我をして保健室へ行った所、保健医不在で彼女に手当てしてもらったことがあるからだ。そして彼女がここに居るという事は、少なからず円堂くんと面識があった事を指す。
切りそろえられた彼女の髪が揺れる。細い黒髪が後ろから前にかけて斜めに切りそろえられていて、細く弱々しい彼女を更にシャープに見せる。彼女によく似合っていた。
彼女と円堂くんが如何にして出会ったのかを私は知らない。だけどそれは私の知らない円堂くんがそこに居た訳だから、出来ることなら知りたかった。あんな事になる前に。こんな想いを抱く前に。

『俺の為にも死なないでくれよ!!』

あの言葉がどれだけ人の胸に刺さるのかを円堂くんは考えただろうか。勿論それはノーだろう。仮に彼があの状況で、それを考えた上で私の前から消えたのだとしたら、私は彼を許さない。


退屈をやり過ごす月曜日

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