俺が何回話しかけても、おなまえは良い表情はせずにそつなく返すだけ。そんなやりとりを何度も繰り返した。

「おなまえは何色が好き?」

「何色でもいいでしょ。」

内容なんて無いけれど、それでも時折おなまえは面白い反応を見せる。
例えば俺の発言に驚いた時、常に冷静そうに見える瞳をぐらぐらと揺らしたりだとか。例えば普通喜ぶような一言に目を細めて冷たく返したりだとか。
一面一面彼女の姿を見つける度に俺は嬉しくなった。

「…なんで」

毎度の一通りを終えて、初めて彼女からの会話が始まる。

「なんで、私に付きまとうの?私はあなたに冷たくしてるのに。」

心底辛そうに顔を歪めて見つめるおなまえに、少し罪悪感を感じた。
きっとこの娘は愛を知らない。直感がそう言っていた。

「おなまえが好きだから」

「馬鹿なこと言わないで。得は無いでしょう?私は人形でしかないんだから…。」

言葉の真意は分からない。ただ、俺は傷つけている。

「人形…?」

繰り返された己の発言に口を押さえて。走り去る後ろ姿は、もう二度と近寄るなと強く主張しているようだった。

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