ある日、不動くんは私の手を少々乱暴に引きながら真帝国学園から抜け出した。別に練習終わりだったし、それが悪いとは言わない。言えない、か。だけど私にとっては凄く久しぶりの‘外’なのだ。楽しみや緊張よりも戸惑いが募る。
一方私の手を引く不動くんは嫌に楽しそうだった。「会わせたい奴らが居る」のだという。私はもう彼に任せる事にした。
訪れたのは病院。そこがどこなのかは土地勘のない私には分からない。タクシーから降りた私たちは早速中へと乗り込んでいく。
とある病室の前で彼は止まった。必然的に私も止まることとなる。開けられたドアの先にはベッドに寝ころぶ源田くんと佐久間くんが居た。
あぁ、彼らか。
大した感情も沸かず、私は不動くんを見る。どうやら不動くんは感情に揺れる私を見たかったようだ。一瞬面白くなさそうな表情をし、しかし次の瞬間にはその顔に不敵な笑みを湛える。
と、突然不動くんの後ろに居る私に気づいた源田くんが私へと「おなまえ、お前っ!」と叫び声をあげた。これに不動くんは満面の笑みを浮かべる。

「鬼道がどれだけ心配してると…!」

佐久間くんも、源田くんに続く。

「心配?」

私は不意に繰り返した。

「当たり前だ!お前が突然居なくなったりするから…」

「だって私はパパの娘だもの。知っているでしょう?私の姓。」

源田くんの言葉を断ち切った私に、2人は唇を噛み締める。不動くんが口笛を吹き鳴らした。
それに、彼には私の決意を伝えたわ。
この言葉は、胸の内に置いたままにした。

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