震える手をぎゅっと握った。驚嘆とも恐怖ともない、不思議な感情が私を包む。
「…。」
鬼道くんはまた、パパの計画を越えた。
私が作り上げた戦士は呆気なく鬼道くん達‘雷門イレブン’に倒される。私はパパの言いつけによりベンチではなく客席から全てを見ていた。
信じるとか、諦めないだとか、そんなの下らない。それよりも私の作品には、一体何が足りないと言うの?
「パパ…」
再び連行されゆくパパの背を目で追う。私が用意した神のアクアが押収されるのも見えた。
パパがまた居なくなったら、今度はどこに行けばいいの?
ちらり雷門ベンチに目がいった。そんな自分が酷く憎い。
バカじゃないの。今や屈強な彼らを、苦しめたドーピング剤は私が作ったのよ。
「鬼道くん…。」
本当は、助けて欲しい。だけど私はパパの娘。そんな私の思考も正常ではないと分かってるつもり。
だってね、君達が勝って‘おめでとう’と思ってる。その反面、もう神のアクアの改良点を考えてるの。分かったわ、もっと強くすれば良いんでしょう?副作用なんて考えてるから、だから真の強さが手には入らなかったんだわ。
私は逃げる様にスタジアムを後にする。
ばいばい、また会おうね。
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