パパが警察に連行された。鬼道くんを筆頭とした帝国イレブンはもうパパに従わないと言い切った。私はパパに言われて部屋の隅に息を殺して隠れていたけど、もう私の居場所はないんだな、って気がついてみんなが去った後に静かにそこから出て行った。
これからどこに行けば良いんだろう。鬼道くんを支えるという存在理由が無くなった私。これからは何をすれば良いんだろう。
帝国学園の門から一歩出て、久しぶりの外に戸惑いながら辺りを見回す。後ろを振り返って、もう私は帰れないと今一度言い聞かせた。
帝国学園はパパを拒絶した。私はパパの娘なんだから、もうあの場所には戻れない。

「鬼道くん」

彼の名を呼んだ唇に指で触れる。愛しかった彼は憎き敵に変わって。下唇を噛み締めると鉄の味がした。
息を吐いて帝国学園に背を向ける。すると目の前に一台の黒塗りの車が停まった。

「影山おなまえさんですね?」

「はい。」

「どうぞ。」

助手席から降りてきた男が後部座席のドアを開ける。
パパの知り合いなのかな?と思ったのもあるけど、そうでないにしても私にはもう失うものはない。私が車に乗り込むとドアが閉まった。
行き先も言わず発進した車。流れてゆく景色を横目に私は涼しい顔で帝国学園を思った。正確には、鬼道くんを想った。
バイバイ、鬼道くん。
目蓋を下ろす。目蓋の裏にはあの優しかった鬼道くんの姿が流星群の様に流れてきて、息が詰まりそうだ。
彼は私が居ない事に気づくだろうか?
今までの彼をマネジメントし続けた、楽しかった日々が私を巡る。
前方に座る2人に気づかれないよう、俯いた。

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