次の日。
1時間目は社会だった。
先生の話をただ聞いているだけの授業だけど、なかなか暇だ。勉強は嫌いじゃないけど、まあ平均程度に好きじゃないつもり。
「おなまえ、あのさ」
隣できちんと授業を受けるおなまえを小声で呼ぶ。嫌そうに反応するおなまえに、俺は困ったように笑った。
「教科書見せて欲しいな」
社会の先生が教科書を渡してくれなかったのだ。
急に転入したために注文しているところらしい。
「…別に良いわ。」
それだけの言葉なのに、少しだけ受け入れられたようで俺は表情を輝かせただろう。
憂鬱そうに肘をつくおなまえに机を寄せる。黒板に新たに書き足された文字をノートに記すおなまえを見て、俺はふと思った事を口にした。
「おなまえって…綺麗だよね。」
お世辞とかそういうつもりじゃなかったけど、おなまえは少しも嬉しそうにしない。
「あぁそう」と曖昧に答えるだけで見向きもしなかった。
「でもなんか素っ気ないね」
怒られるかな?と思ったら微妙にずれて返される。
「学ぶ気がないなら机離してくれる?勉強の邪魔。」
「真面目なんだ」
驚いたように目をぱちくりさせるとつんと澄まして前に向き直ってしまった。年配の先生が眠そうにだらだらと長い説明を伝えている。
普通喜ぶものなんじゃないのかな。むしろ嫌そうな顔をするって、なんだか面白い。
俺は自分の中で益々彼女への興味が湧いている事に気づいていなかった。
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