叩かれたのだと事態を理解するのには、通常時の5倍から8倍掛かったのだろうか。とにかく処理能力やらなにやら全てのデータが飛んでしまったような感覚。前後不覚とはこの事か。

「…おなまえ…?」

「一之瀬の馬鹿。」

「え?」

おなまえの笑顔は相も変わらず美しい。だがそこに光が差すように、闇が差し込んで見えた。

「邪魔しちゃいけないって、引き留めちゃいけないって、こっちが我慢して堪え忍んでいるのに…大阪で遊園地で女の子とお好み焼き?随分良い御身分ですこと。私は学校が壊されたお陰でまるでする事も無くて、だから否応無しに一之瀬の事ばかり考えて。勝手に…心配してる間にも、一之瀬はそう、だったのかしら?」

白く消えた俺の頭を満たすようなおなまえの罵声。

「もっと近くに居たかった…。あなたを傍で、支えたかった。」

勝ち気な彼女の双眸から大粒の真珠が落ちる。俺は遅ばせながら意味を理解し、堪らなく嬉しくなった。
つまり、だ。おなまえは俺を必要としていた。おなまえはずっと隣に居れなかった俺のことを、考えて、心配してくれた。目前のおなまえが愛しく感じる。

「おなまえ…!!」

俺は泣き続けるおなまえの肩を抱いた。抵抗するおなまえに胸板を押されようとも、離す気はない。

「離して!!」

「嫌だ。おなまえを悲しませたのは俺だし、俺が悪いのも分かってる。でも俺は傍に居るって、約束した。だから今度は離さない!」

「…っ」

肩を震わせて尚泣くおなまえに、だけど今はそっとぎゅっと包み込んだ。

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