ブラウン管越しに試合を見つめる。
初めはサッカーのルールなんて微塵も分からなかったけれど、少し理解出来るようになってきた。
昔なら知ろうとも思わなかっただろう。
一之瀬と一緒には居られないから、その分の不安を知識で埋めたい。一之瀬の好きなサッカーを知って、一之瀬の事を沢山知っているつもりになっている。
単に不安なんだ、私は。
一緒に居られないのは分かっている。だけど頭で分かっていても心が分かろうとしない。
一度帰ってきたけど、それっきり。一之瀬からの電話もメールもない。向こうはサッカーの練習で疲れているだろうし、メールなんて面倒だろうな、とは思う。そして私はそんな一之瀬の邪魔をしたくない。電話なんて尚更だ。
不安は積もる一方だけど、こんな不安なら我慢できるだろう。そう自分に言い聞かせて、私はブラウン管の中の一之瀬を目で追った。

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