それから俺達がみんなに冷やかされたのは言うまでもない。まあ俺にとっては全く苦ではなかったけど、おなまえはいきなりたくさんの知らない人(主にサッカー部)から話しかけられ目を白黒させていた。
「ねぇ、おなまえは何が好きなの?」
「て?」
大騒ぎの部活が終わり、俺とおなまえは一緒に帰っている。
事の発端は秋の言葉で、秋が「せっかく彼氏になったんだから守らなきゃね!」って俺の背中を押した。これによりまた一波乱起きたのは置いといて、付き合ったって感じがして少し嬉しい。
「俺は小さい頃からサッカー一筋だったからさ…。おなまえもそう、趣味とかある?」
少しでも多く、君と一緒に居たい。少しでも多く、君の事を知りたい。少しでも多く、君を守ってみせたい。
「趣味…?」
並んだ肩の、無意識な近さが嬉しい。
「…歌、かな。」
いつかおなまえが屋上で歌っていた歌声を思い出した。
透き通っていて、でも芯のある声。おなまえの声。
「おなまえの声綺麗だしね。」
「そう?」
「うん。」
おなまえの足が止まった。どうやらここがおなまえの家らしい。
ななしのと彫り込まれた表札と、しっかりとしたお宅。
おなまえが門に手をかけ振り返る。
「明日、決勝なんでしょ?」
「覚えててくれたの!?」
「あんだけ言われたら覚えるわよ。」
そう言いながらも照れてるおなまえが可愛い。
「…観に、行くから。」
「頑張るよ。」
約束とサヨナラは、あの夕陽が見ていた。
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