今日の俺は絶好調だ。
おなまえが観に来ると思うと気持ちが浮き足立って、いつも以上にファンサービスにはしった。
「あ!」
黄色い声援を送っている女子たちから少し離れた位置におなまえを見つける。大振りに手を振ったけど、おなまえはそっぽを向いて歩き去ってしまう。
「え、」
去ってゆく背を見送るなんて出来ない。
俺は何も言わずに練習を抜けた。
校門から出てすぐおなまえを見つける。部活動が始まって少したった今では、もう下校している生徒は見当たらない。
「おなまえ!!」
俺の声に足を止めるが、振り向きはしないおなまえ。
「なんで帰っちゃうんだよ」
おなまえの手がぎゅっと握られた。
「…たくさんの女子にキャーキャー言われて、満足?私そんなことしたくないから。」
「満足って…おなまえ…」
「私じゃなくてもいいじゃない。褒めてもらえるわよ、あの辺にいた女子たちになら。」
言い捨てるように言って歩き出す。
そんなおなまえの手を無理矢理取って振り向かせた。
「俺はおなまえじゃなきゃ嫌だ!…おなまえに観てほしいんだ!!」
近づいた顔と顔。彼女は泣いていた。
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