士郎くんを乗せたキャラバンの旅は、宇宙人との試合のたびに生中継された。日本中の注目が集まる一戦を、私もお茶の間で固唾を呑んで見守った。
 テレビの画面越しに観るアツヤくんは変わらず生き生きとしていた。肉眼でないのも相俟って、まるで死んでしまったことが嘘のようだった。しかし沖縄での一戦後、その生き生きとした姿は鳴りを潜めた。テレビ越しのアツヤくんは……士郎くんは、コートに頽れた。
 限界が来たのだろう、と心のどこかで冷静に見ている私が居た。一方で、心の中の幼い私はアツヤくんを心底心配していた。ヒリつくような嫌な予感がして、士郎くんの心配半分、アツヤくんの心配半分、心が割れてしまったようだった。
 次の試合、次の試合……士郎くんは徐々にサッカーと向き合い始めた。キャラバンの仲間の助言もあってか、士郎くんの目が前を向いていくのがわかった。幼馴染としてその成長は心の底から嬉しいことだった。と、同時に、アツヤくんのことを思うと胸が張り裂けそうだった。
 彼の目指すサッカーは、アツヤくんと士郎くん、2人で完璧を目指すプレーから、チームと協力してみんなと共に歩むプレーへと変わり始めていた。彼の中にしか居ないアツヤくんが、彼にとって不要となっていく。そして遂に、彼は心の内のアツヤくんの人格と統合を果たした。
 生まれ変わった士郎くんは、以前よりずっと大人びて見えた。清々しいほど周囲の祝福を受けて、彼はその目を真っ直ぐ前へと向けていた。取り残された私は、まるでその目が「決して過去は振り返らない」と言っているようで、なんだか悲しくなった。
 そうして私のアツヤくんは、2度目の死を迎えた。

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