これまた天気の悪い日だった。ライオコット島に来て初めての、1日中続く雨らしい雨。
チームの洗濯物は膨大な量で、それを1日溜めるなんて出来ない相談だ。どうしようと頭を悩ました結果、広い食堂の宙に紐を這わせ、縦横無尽に干していくという案を採用した。一連の作業は思った通り大変で、それを終え、空になった洗濯篭を抱えていた私は外を行く一之瀬の傘を見た。
もう随分、必要最低限の会話以外していない。一之瀬は何かを隠していて、そして私がそれに気づいているのはわかっているらしかった。一之瀬の隠し事に踏み込む勇気のない私は動く事が出来ない。現実に甘んじている気持ちもあった。
買い出しの為に傘を開くと、白い傘は視界のほとんどを遮った。前だけ見て歩く私にはあまり関係のない事だが、確かに逃げ場はなくなってしまう。一之瀬の傘が見えた。
一之瀬の傘の近く、可愛らしい色の傘を見て、私は足を止めた。遠くてよく見えなかったが、なんとなくそれは木野さんな気がして、それからは木野さんにしか見えなかった。2人は何やら話をしている。
一之瀬の傘が揺れた。私はぼうっと2人を見ていた。木野さんは、彼女は、私が長い間まともに言葉を交わしていない一之瀬と、会話をしていた。隠し事の事を話しているのかもしれない。
一之瀬は私の彼氏ではなかったっけ、と心が呟く。木野さんは一之瀬の幼なじみじゃなかったっけ。彼女より幼なじみの方が大切なものなんだっけ。

「…嫉妬、か。」

醜いな、と自嘲しても、決してその感情が消える訳ではなかった。一之瀬と木野さんの、並んだ傘を雨に見送って、私は一足先に合宿所へ戻った。

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