何度おなまえに怪我の話を打ち明けようと思ったかわからない。おなまえは土門から聞いているんだろうか、だとしたら俺が話し出さないのは裏切りに近いものだろうか、なんて思う。けれど、おなまえに無用な心配をかけたくないのも確かで、口にしたくないという男としてのプライドだって持ち合わせている。
正直、調子はそう芳しくない。日々自分のパフォーマンスが低くなっているのを感じる。気づかれないように必死になって、怪我の箇所だけでなく全身が辛い。しかし俺は前を向いていなくては。
ユニコーンの予選突破の少し後。ジャパンの予選突破が聞こえてきた。着々と駒を進める円堂達に、俺も負けてはいられない。

「一之瀬、」

不安気な土門の表情。最近おなまえとの会話が減り、代わりにこの不安な表情をよく目にするようになった。申し訳なさ半分、俺を気にしてくれる幼なじみが居るという嬉しさ半分。

「大丈夫。さ、練習続けよう!」

"幼なじみ"その単語に引き摺られるように、秋の顔が浮かんで消えた。いつも優しい彼女なら、俺の不安もそっと包んでくれるのではないか。そう思うのと会いたいと思うのはほとんど同時だった。

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