4人
「アカイトは何色がいい?」
良く分かったなぁとでも言いたげな微笑でひとの髪を乱す奴の手のひらを捕まえたあと。
同じの買ってやろうか、と案の定の提案に溜め息をついて寄越された端末の画面を覗く。
押しに負けてるときの面して写るカイトは困ったように微笑んで、それでも楽しそうだった。
顔の作りは俺と殆ど同じでも、表情一つで印象なんてものは幾らだって変わる。
シンプルな渦中のコートは定番だけれど少し幼く見える気もした。ユニセックスな型が余計に。
「俺には似合わな」
「似合う」
似合うよ、と繰り返したのはカイトで。
「ブラックか、キャメルは?」
選択を絞ったのはカイトのマスター。
「いっそ色も揃えてグレーとか」
「おい…天才かよ」
ここぞとばかりに囃し立てる大人ふたりへじろりと胡乱な視線を返す。
おまえら本当に、おまえらこの野郎。
「色もお揃い…」
いいように流されてるとも気付かないカイトは、そわそわと落ち着かない顔をして俺を伺ってきたりする。
服、靴、小物の類に至るまで。
これまでだって成り行きで幾つかカイトと同じ物を持っている。
が、身につけて出かけるようなアイテムで、色まで同じってのは確かに無い。
そこがカイトの琴線に触れたらしい。
きらっきらと期待に満ちた眼差しには多分重力がある。
俺には頷く以外の術がないって、知ってて丸投げしてきた決断を下すのは、大いに釈然としないけど。
最初っから選択肢なんてものは無いに等しい。
「〜…っ好きに、すればいいだろ、もう」
わぁっとはしゃいだカイトが俺の手を両手で掴んでぶんぶん振ってきたりする。
まったく同じ行動をさっき見た気がするし、していた奴は言わずもがな嬉々として、どーする?と騒がしい。
「今日?今日行く?明日?それとも今日?」
「んー明日?」
「俺まとめて買ってこようか?」
いや一緒に行くと答えた奴が案外意欲的なのは、見たかった反応を見られたからだと思う。
機嫌よく喜色を浮かべたマスターと目が合って悪い気はしないのだから、俺もとやかく言える立場じゃない。
隙あらば撫でてくる手のひらを今度は好きにさせといた。
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