4人
「初詣で…俺が着てたコート」

クリスマスに頂いたものなんです、と。

睫毛を伏せたカイトが言ってるアウターを思い浮かべて腑に落ちた。

「ああ、雪の」

「雪の?えっと、白いやつです」

「あのコート、こいつが雪の精みたいだろって」

真顔で宣う友人を前に憐れにも俺は新年早々凍死するところだったのだから、大いに労ってくれてもいい。

夏場はその情熱を暑苦しく思うのに、冬になると寒さを煽る全く環境に率直な男だと思う。

「カイトは雪っぽいなぁって」

前からちょっと思ってたんだ、とか言う。向かいの友人に頷き返した。

「ああ…汚したい感じが?」

新雪とか真っ先に足跡付けたくなるもんな。

「…ちょっと暑いな、こたつ切るか」

「ばか!やめろ、マスター謝れはやく」

「アカイトを味方につけるとは…」

「ごめんなさいは?」

誰も踏み込んでいない領域を誰より先に侵したくなる。

って要素で括るなら、アカイトだって十分に雪っぽいと同意したのにご不満らしいが。

そんな態度でいいのだろうか。

「他の色は?」

「なに?」

「おまえが、カイトに買いたがってるダッフル」

類稀な鈍さを随所で発揮する友人も極一部に関しては恐ろしいくらいに閃く。

こちらが出そうとしている助け舟を的確に把握したらしく、記憶を辿る視線を流した。

「えーと確か…ネイビー、グレー」

ブラック、キャメルの4色。

ほら、と見せられた携帯を覗き込む。試着は一応したらしい。

画面の中に写るカイトはグレーを羽織って確かに。

「可愛いな、似合ってる」

「だろ!?そうだろー!」

こたつの中から一切両手を出さなかったアカイトが思わず耳を塞ぐくらいには煩いし握手せんでいい。

「あーもーいいから、座りなさい」

「すまない昂った」

「あ、あのっだめですよ、俺はこの間、頂いたばかりで」

腰を浮かした友人の隣でカイトが躊躇う気持ちもまぁ、分からないでもないが。

何かご自分の物を、と幾ら勧めたところで詮無い類だ。

自分好みの何かを贈る相手は『ご自分の』内だろうし、最早こいつの趣味だと思う。

アカイト、と名を呼んだ俺の二の句を悟ったらしい子が、いかにも面倒そうな顔をしていて。

思わず頭を撫でた手は白刃取りの要領よろしく両手でぱしんと挟まれた。

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