1212
「クリスマスの予定?」

俺のオウム返しにメイトが小さく首肯した。

やべぇ特に何も考えてなかった。まだ間に合うか?

反射的に眺めたカレンダー、本日は既に12月の中旬に至ろうとしている。師走こえー

「あーどっか行く?店、探しとこうか」

「いや、決めてないならいいんだ」

軽い口調。
本心か察するにはテレビが煩く距離も遠い。

膝で眠る黒猫に謝ってこたつを出ると、足元で上がる不満気な声音。

概ね優先される座椅子業も、不穏の兆しが見えたら辞職せざるを得ない。

向かったキッチン、作りかけの夕飯を前に腕を巻くって手伝うと声を掛けた。

「え、何でだよ座ってろよ」

っていつもメイトが言うから、従って任せていたけど。

よく考えれば…いや考えるまでも無くいろんな面で甘えすぎていたかもしれない。

「行きたいとことか、リクエスト無いの」

予定を聞くくらいなのだから思うことがあるのだろうと。

戻した話題に瞬いたメイトが俺から少し視線を逸らした。珍しい。

「あー…その、おまえの周りの奴らさ」

「…うん?俺の?」

「やっぱ、どっか行ったりするって?」

「どうだろ。相手が居る奴は、まあ…そうかもな」

けど今年は前後共に平日だ。

「他はいつも通りか、飯行くかだと思」

「まじか、なぁそれうちで…あー…うちで出来ねぇ?」

出だしの食いつきが嘘のように失速する。取繕うような咳払い。躊躇う空気。

「うちで?あいつら呼ぶってこと?」

いつになく言い辛そうな挙措に戸惑う所為で余計に話が見えない。

「俺、…鶏焼きたい」

「とり」

「七面鳥…は無理でも丸焼き?あとこれとかーこれな」

食器棚から出してきた本を目の前で捲って見せる。

「あとケーキ…おい、しゃがみこむな邪魔くせぇな」

「だって何だよ!おまえもう」

「無理そうなら別にいいんだけど」

「そうじゃなくて…」

腰が砕ける。なんか深刻な話かと…びびってないし、べつに泣いてない。

つまり作りたい料理に対して食い手が足りないと。そういう懸念らしいが。

そんなの来るだろメイトが作るって言えば。おまえ何人餌付けする気だ、とは思うけど…

滅多にない彼の希望はなるべく聞きたい。

「いいけど…うちのオーブン小さくねぇ?」

「あー…まぁ、なんとかなるだろ」

「いっそ買うか!新しいの。ボーナスで」

「ばか」

立ち上がった勢いの名案に返る表情は渋い。貯金しろとか言う。するけど。

「クリスマスプレゼント」

「高すぎる」

「お返しはメイトで」

それなら相応?おつりが必要?そう問えば、漸くいつも通りに呆れた顔で笑うから。

「そうだ、なー招待状作ろっか。クリスマスパーティーのお知らせ」

安心して纏わりついたまま浮かんだ思いつきを安易に告げる。

「おまえってたまに言うことが可愛いよな」

改まって感心した素振りを見せたりするけど、鶏焼きたいを口篭ってたメイトには言われたくないと思った。


end
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