静聴で成長
ショッキングショッピングのふたりのような
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「かっわいいなぁ」

さっきからそれしか聞いてない。

揶揄も呆れも混じることなく、
純粋に笑うメイトなんてそうそう見れるもんじゃないから。

「な…何その笑顔…ずるい!」

俺にも向けて、と送った要求は耳に届いてるはずなのに。

淹れて貰ったカフェオレと同色の瞳がこっちを映すことは無く。

釣堀の岩場でコケて額に絆創膏を貼ってるどんくさい子供を捉えたままだ。

「向けてんじゃねーか」

「今のっ今の俺に…」

くそ、こんなことになるなら掃除なんかしなきゃ良かった。

衣替えがてらちょっと部屋でも片付けて褒めて貰おうなんて打算が裏目に出た。

クローゼットの隅から発掘された数冊のアルバムは実家を出る際持ってきた物らしく。

存在自体を忘れてたっていうのに。それの所為で。

現在の俺が忘却されるという由々しき事態を誰が予測出来ただろうか。いや出来ない。誰にも出来ない。

「こっちは?中学?」

「…中、高、これ最近だ1年前?」

「年々可愛げが失せてくなぁ」

「え?かっこよくなった?」

「…。」

やっと取り戻せた視線に喜べたのも僅かな間で、修学旅行中の俺に直ぐ奪われてはいったけど。

「物事ってのは捉え方次第だよな」

瞳を細めたメイトが色っぽく笑ったり、するから。

衝動的に押し倒した勢いでキスしても仕方ない流れだったと思う。

「…おまえなぁ〜」

危ないだろとか呆れた顔をしたひとに頭をはたかれたけど掠る程度で痛くない、から怒ってはいないらしいが。

「この頃から成長してないんじゃないか」

なにやら失敬なことを言ってくるから。

「物理的にはしたよ」

見たい?とベルトへ手を掛けた傍から意地の悪い愉しそうな視線を浴びる。

「技術的には?」

「…。」

沈黙は肯定と捉えられる確率のが高いけどこの場合は逆だろう。

「…なんだよ、拗ねるな」

成長途中なんだよな、とか気を遣われる方が切ない気はするけど。

沈黙は金、とは良く言ったものだ。

上体を起こしたメイトがフォローの一環らしいキスをしてきたりするから。

この手は使える、と恋人の扱い方をひとつ学んだ。


end
わんわんシリーズ(笑)のマスイトを、と言ってくれた方へ^^
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