4人
「俺、上な、上が良い!」

室内の小さな螺旋階段がお気に召したらしく。

声色と同じくらい軽快に上って行ったアカイトを見送ってマスターと笑った。

一戸建ての貸しコテージは2LDKの間取りで、1階と2階に一室ずつ寝室があるらしい。

「おー結構いいなー」

「ですねー」

吹き抜けの天井でからから回る、プロペラみたいな空調が可愛くて見入ってたけど。

「おー結構いいな」

「ですよねっ」

後から入ってきたひとが言った台詞は聞き逃さなかった。

性格はまるで違うと思うのに。
マスターとアカイトのマスターはたまに妙に似た反応をする、から。

その場に居れた日はいいことがあるんじゃないかと俺は密かに思ってる。

所為で、返した同意に思わず力が入りすぎたらしく。

うん?と笑ったアカイトのマスターに頭を撫でられた。

「荷物これで全部?」

「トランクのやつは持ってきたけど」

「食べ物、先に冷蔵庫入れちゃった方がいいですよね」

滞在中はほぼ自炊の予定を含めて、4人分となると結構な荷物だ。

「いいよそれ俺運ぶ」

持ち上げかけたクーラーボックスを隣から持って行かれて。

「あー待った」

じゃあ、と手を伸ばしたビアケースはアカイトのマスターに制された。

「カイトはそっち部屋に運んで」

「は、はいっ」

衣類の入ったボストンバッグを指されて反射的に頷く。よかった、やることあってよかった。

「アカイトどこ行った」

「あ、そうだおまえらの部屋2階なー」

マスターからの一報だけで向かいのひとは成り行きを悟ったらしく。

「カイトは?」

下でいいの?と俺の希望も聞いてくれたけれど。

「俺はどこでもいいですよー」

「俺も俺も、カイトが居れば」

キッチンカウンターの向こうで手を挙げたひとにアカイトのマスターは肩を竦めて。

なんか急に寒いなって言ったけど、俺はなんだか無性に暑くて仕方なかった。

避暑地に来たのに。


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