きっとしっと
「おーこれは?」

綺麗に並ぶ商品のひとつを手に取った流れでそのまま、掛けて見せたメイトに笑って。

「キャーステキー抱いてー」

こちらもお似合いですとか遊んでたら、何かお探しですかとやってきた売り場の子に笑われた。

「や、すみません俺のじゃなくて…」

惚れた欲目で見なくてもデザインを選ばない顔立ちならば勧め甲斐もあるだろうが。

「俺ですみません」

どう足掻いても東洋人顔の俺に、違和感の無い型は限られていると思う。

とりあえず今メイトが棚に戻したゴーグルタイプのワンフレームは無理だ。

けれどそこは相手もプロで、運転用、だけど普段も使えれば程度の要望に適した物を見立ててくれた。

似合う似合うと笑ったメイトの横で頷く店員さんは荷が下りたのか最早ひとりの女の子でしかない。

気持ちはまぁ、分からないでもない、どころかとても良く分かるけれど。

お買い上げが済むまでは販売員の顔で居た方がいいんじゃ…なんてお兄サンは要らぬ心配をしてしまうよ。

「あの子、目がハートだった」

「…そうかぁ?」

勘がいいメイトが、向けられる秋波に気付かないわけがないのだから。

「ステキー抱いてーだった」

茶化すように告げたところで、こちらの心情を察するのだって早い。

「おまえ直ぐ妬くよな」

連休に相応しく空きの無い駐車場、開閉音を互いに鳴らして乗り込んだ車内で、呆れたようにメイトが笑った。

「そりゃまぁ面白くない気持ちは湧くけど…」

「けど?」

人目に晒したくなければこうして、連れ回したりはしない。

「なんつーか、ちょっと優越感?」

「なんだそれ」

「俺、恋人は自慢したいタイプなんだよ」

昔から、と笑って開けたケースからタグを取ってもらったばかりのサングラスを掛ける。

「…ああ、そう」

西日を遮りセピアに染まった世界と共に、がらりと移ろう隣の声色。先の失言に気付いても遅い。

「…いや、そんなに居なかったけどな」

窓の外へ流れた視線に苦笑して、フォローを必死に考える。

おまえも直ぐ妬くよな、とは内心に留めておいた。


end
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