マス赤とカイト
「…あ、ハロウィンか今日」
西瓜の種みたいな両目と波線の口で成り立つ、コミカルな表情を見つめて数秒。
「おっせぇ」
思い当たった答えに眼下のおばけが呆れた声を出した。
「何だこれあはは可愛いな」
「貰った、俺のだって」
こいつが自ら見せに来るってことは恐らく。
「俺とお揃いなんですよー」
案の定の補足に笑って、廊下の奥からやって来たカイトのお帰りなさいにただいまを返す。
「あいつは?」
「今電話あって、もう少し掛かるみたいです」
「月末だしなぁ」
確認した腕時計が示す時刻はもう直ぐ8時を回るあたりだ。
イベント毎の何かを先に用意するのは、どうにも割けない時間代わりの意味もあるんだろう。
あいつの場合、狡猾な意図があるとは思えないから、ただひたすらにマメだと思う。
「じゃあ、カイトも家おいで」
それっぽい晩飯でも作ろうかと告げた誘いに、おばけタオルを脱いだ子が興味深げな視線を上げる。
「それっぽいって?」
「ハロウィンっぽい」
「わあ俺、俺手伝います」
勢いで乱れた深紅の髪を直す傍ら、挙手したカイトに頷く。
物言いたげな散らかし魔への快諾は躊躇いたいが仕方ない。
「アカイトは?」
「どーしてもって言うなら」
手伝ってやらないことも無い、とかなんとか不遜な申し出に苦笑して頷いた。
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