相乗の相生
土曜か日曜は大抵、僕がメイトの家へ行く。


元々家が近かったから、マスター同士の交流も含め会う機会は度々あった。

けれど毎週末、顔を合わせるようになったのは数ヶ月前からだ。

前日または当日、彼から連絡が来る。
最初は、昼飯を作りすぎたから食いに来い、だった。

その頃のうちには付き合い始めたばかりのマスターとアカイトが居て。

出掛ける直前までいつもごねる、ふたりの誘いを上手く断る理由になった。

最近は先約を分かっているのか、もしくはふたりで過ごす時間に(やっと)慣れたか。

彼らのデートに無理やり僕まで、巻き込もうとすることも無くなっていたけれど。

メイトと会う、週末の約束は自然と続いた。


「今日マスターは?」

「映画、彼女と。そっちは?」

「…恐竜博物館だって」

あのふたり何の色気も無いと。軽い、笑い話のつもりで。

彼の家で、彼が作った焼き菓子を食べながら、口にして、顔を上げたときには、もう。

時折、向けられる、いつもと違う視線を浴びていた。

同情なのか、友情なのか、愛情なのか。

どれかなのか、全部なのか。判断に迷う。

たった今まで、同じ視点で話していたひととは思えないくらいに。

大人みたいな顔をするから、正直反応に困る。
見透かされる気がするし、実際そうなのだと思う。

僕が、同居人に、アカイトに、抱いていた葛藤や諦めはとうにバレているんだろうな。だから、優しい。

けれど、その先は?
どこまで分かっているのか分からなかった。

何も聞かないから言わない僕と、
何も聞かないから言わない彼の。

曖昧で気楽な時間にずるずる甘えて、今まで。
与えられる距離感や気遣いを受け取っていたけれど。

失恋が口実に、なっていたのはいつからだろう?

「メイトは、…好きなひといないの」

単純な二択の答えを知るのが怖く、なったのは?
最近な気もするし、違う気もする。

変化を前に、臆病な彼らのもどかしさを今更、共感しても遅い。

やっと言葉に出せた探りに一度、瞬いたメイトは呆れた顔で薄く笑った。それだけで、もう。

嘘みたいに、泣きそうだ。

やっぱり、まさか、もしかして、巡る思案の行き着く先は。

そうだったら、いいのに。


「…鈍感って感染すんのかな」

「止めてよ、してない」

笑った声が少し震えた。目前のひとは瞳を細める。

「来週は、どっか行こうか」

「なにそれ…デート?」

伸ばされた手のひらが、慈しむような仕草でひとの頬を撫でたりするから。

「そう、デート」

やだ?と甘く誘う笑顔をもっと見たいと思っても、簡単に滲んでぼやけた。


end
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