不純な矛盾
20:09 マスター
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残業
「…。」
簡潔すぎる。
相変わらずのメールを眺めて。
飯は、と送った数分後に、食う、と素っ気無い返信。
「だったら最初に入れろよな…」
ひとりで過ごす時間が長いと独り言が増える気がする。
テレビに話しかけだしたら末期だと言っていたのは誰だったか。
その説を辿るなら俺は既に何かの終わりに近付いているらしいが。
独り言どころか日常的な口数も少ないマスターの方が…いや言うまい。
俺とはこうでも、さすがに職場では2文字以上のコミュニケーションがあることを祈る。
表情も乏しいが不機嫌なわけではないと、周囲が気付く程度には。
なんて、考えすぎだ。
相手は子供じゃないってのに。
了解、と打って電子の手紙が飛んでくモーションを見送る。
俺用の端末を唐突に買って来られたときは無駄なように思えたが。
電話を掛けるほどでもないやり取りをするには携帯メールは便利だった。
再度鳴った受信音に瞬いて確認した画面には『メイトも』の文字。
俺も、なんだよと思えるほど初心になれない俺も大概可愛げがないが。
解釈の全てを受け手に委ねるこいつも大概狡い大人だ。
もしかしなくても、先着の『食う』に繋がっているのだろう。
キッチンから米の炊けた音がして、先に夕飯の準備を済ませてる間に。
無言を拒否と受け取ったのか、着信ランプが点滅していた。
『だめ?』
一体どんな面して送ってやがるんだ。疲れてんのか?まさか何かあったんじゃ…
なんて単なる単語だからこそ色々考えてしまうのが割りに合わない気もして。
再び了解とだけを返した僅か数分後。
『^□^』
笑った。
笑うしかなかった。
恐らくいつもの仏頂面で送ってるのだと思うともう駄目だった。
日付が変わる間際に帰ってきたマスターは今朝と変わらず無表情で。
淡々と飯を食ってる時も、
風呂から上がったあとも。
共に入った寝室で、部屋着を脱がされてる今も。
「おまえは笑わせるのが上手いよな…」
思い出すたび込上げてくるものに逆らわず肩を震わせてしまう。
こちらを見下ろす目元には微かな疲労の影が潜んで端整さが際立った。
「…そんなこと」
言うのはメイトくらいだと。
額にキスが落ちたとき初めて、困惑気味に苦笑するマスターの顔を見た。
募るのは優越感でしかない。
俺だけが知ってればいいのになんて、いつもの願いと矛盾した独占欲に駆られるまま。
繰り返されるキスに応えて目を閉じた。
end
募マス箱より「感情が読み取りづらい」マスターでした。
「例えば無表情だったり、ずっとニコニコしてたり…ボカロはそんなマスターの感情が何となくわかる子が良いのですが…」
とのことだったので無表情&メイトを選択してみました。
メイトなら寡黙系マスタにも上手く渡り合えると思ったのですが、思いの外マスタが愉快なひとになってしまった…!すみません!
寄付して下さった貴方様へ捧げます。ありがとうございマスター!^^
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