青と赤
「うわ、また雨かよー」

さっきまでラグにうつ伏せて雑誌を見てたアカイトが唐突に呟くから。

「外行くの?」

テレビから視線を外して眺めた窓の外は、確かに朝から曇ってた。

ついに降り出したらしくグレーの空にストライプを描く雨粒。

口振りからして不貞腐れてるのかと思ったけど、そうでもなく。

「…いや?別に」

あいつが最近毎朝言う、と紙面へ向き直った表情は淡々としてるから、もしかして。

「今のマスターの真似?」

こちらを見た深紅の瞳が瞬いて、似てた?と返るのに笑った。

「うーん…俺それ聞いたことないし」

「なんだよ、じゃあ口癖な」

上体を起こしたアカイトが咳払いする。ほ、本気だ。

「アカイトそこで寝んなー」

「あはは」

「似てた?」

「う、うーん」

どうだろうと濁した評価がお気に召さなかったらしく。

「なんだよ!じゃあおまえもやれ」

「えっ」

1個くらい口癖あんだろとか無茶振りが返るけど。マスターの口癖…

咄嗟に思い返して直ぐに浮かんだひとつに慌てて首を振った。

「アカイト怒るからやだ…」

「怒んない!つーかなんで俺が怒るんだよ」

そもそも恥ずかしいから嫌なんだけど、訴えたところで納得してもらえる筈はなく。

拗ね混じりにごねだしたアカイトに結局は押し負けた末。

「…か…っかいとはかわいいなー」

言った瞬間壮絶な後悔に襲われた向かいから真剣な瞳にじっと見られる。

「おまえそれ…自分で言ってて恥ずかしく無」

「恥ずかしいってだからいっぱい言ったのに!!!」

ぶわっと顔中熱くなったのと同時に揺らいだ視界で、ハッとしたアカイトがまた咳払いをした。

「こらー何カイト泣かしてんだ」

「…今のは」

ちょっと似てたと思うと告げた評価に満足して貰えたらしく。

再び寝転がったアカイトが鼻歌混じりに雑誌を捲りだすのに苦笑して、眺めた空は今も小雨で霞んですっきりしない。

「…マスター達、帰って来る頃には止んでるといいねー」

「おー」

「止まなかったらお迎え行こうか」

「…えー」

季節変わりの天気と同じくぐずついた返事に笑った。


end
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