ice or ace
「はぁすごい…」

賞賛と一緒に零れたカイトの溜息が、あまりにも大袈裟で笑った。

「おー惚れ直した?」

「すごく!」

「…。」

冗談を大真面目に返されると何でこうも居た堪れないのだろうかと。

流れた沈黙をどう捉えたのか、食卓のアイスから視線が上がって。

「あ、でもメイちゃんはいつでもカッコい」

「いいから、早く食え」

やっぱり真剣に掛けられた追い討ちは思わず遮った。

素直に従ったカイトは星でも飛びそうな笑顔で握ったスプーンを口へ運ぶ。

「メイちゃんアイス屋さんになればいいのに…」

ねだられるまま初めて作った割には上々の出来だったらしく、安直な発想の感想に苦笑して。

俺は酒屋のがいいなぁとこちらも安易に零した戯言に残念そうな視線が返った。

「そっかー…」

「…また作ってやるから」

「ほんとに?」

瞬く青い瞳からキラキラ再び星が飛ぶ。

その度に胸の奥で灯る何かが分からないほど鈍くも無い。

「気が向いたらな」

「わー明日向けば良いのに!」

からかうつもりの蛇足に予想してた不満は上がらず、笑ったカイトに呆れて笑った。

「おまえは…楽しそうでいいよないつも」

「メイちゃんが居るからね」

ガラスボールの中身を掬った銀のスプーンを向けられて、促されるまま口を開いた。

向かいで緩んだ表情も、直ぐに溶けてくバニラの味も。

皮肉に対する返しにしてはどちらも甘い。

「…上手いなぁ」

「ねーおいしい」

おだてるのが、の意味で零した賞賛を、別の意で汲み取ったらしいカイトに笑った。


end
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テーマ「人外ファンタジー」
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