Q&急
「…アカイト?」

冷え切ったキッチンで淹れて来たご所望の珈琲を両手に。

戻ったリビングには、さっきまで居たはずの姿が無かった。

けれど、アカイトが羽織ってたパーカーが無造作に落ちている。

残されたヒントを頼りに捜索するまでも無く、新たな手掛かりが増えた。

足元で動いた布団の中から外へ、追い遣られた靴下に呆れて。

「そこまでして潜らなくても…」

暴いた空間で眠そうな顔してる子を見つけた。

せめて頭は出しなさいと布団を上げても文句が上がることはなく。

不機嫌になる段階を超えているからどうやら相当眠いらしい。

寒さに負けて『買い物カートに入れる』ボタンを衝動的にポチッたこたつが家に届いて数分で。

早くも魔力に掛かったらしく、アカイトが出てこなくなった。

「珈琲、冷めるよ」

「…んー」

ぐずるような返答に笑って梳いた髪は僅かに湿っていて。

「おまえやっぱ暑かったんじゃねーか」

のぼせたみたいに染まった頬は見た目通り熱を持ってる。

「…なんだこれ」

すごい、と呟いたアカイトがぼんやりと視線を寄越した表情に。

なんだそれ、えろいと思ったのは珈琲と共に呑み込んでおく。

脳裏に過ぎった既視感でうっかりその気にならない内に視線も逸らした。

緩やかな微睡みをこちらの欲で邪魔したくは無かった。

「こたつ?」

「…うん」

「…気に入った?」

「…ん」

「俺より?」

なんて家電と張り合ってる時点でどうなんだって気もするが。

今にも寝そうな声に笑って投げてた戯言に、意外と素直な応答が途絶えて数秒。

ついに寝たかと眺めた先で、困った顔したアカイトが眉を寄せてた。

「…比べる部門がちがうだろ」

ばかじゃねぇの、とこたつの中で足を蹴られた衝撃こそが比にならない。

律儀に答えてくれる気だったらしい。

言葉は無くても想いがあるのは伝わってるから、無理に聞いたりしないけど。

機会があるなら、勿論聞きたい。

まず、まず俺は、どの部門なんだと問うべきか焦ってる間に、上がった寝息に先を越された。


end
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