4人
「まだ?」
真っ暗だった夜空は朝の淡色を混ぜ始めていて。
遠い地平線に沿って日の色は増しているのに。
中々顔を出さない太陽が焦れったいのはカイトも同じらしく。
もう少し、とアカイトに笑った友人へ視線を上げてはまた東へ戻す。
真剣な顔が可愛くて、当初の目的を忘れそうになった。
「あっマスター」
カイトに腕を引かれたのと、周囲に歓声が沸いたのは同時で。
やっと眺めた空の向こうに強い光が昇り始めていた。
待ってる間は長くても、姿を現しきるまでは数分にも満たない。
それでも昂る感情は確かにあって、繋いだ手を握り返してきたカイトがこちらを見上げた。
「…明けましておめでとうございます」
興奮が冷め遣らないまま頬を染めて呟く声には感嘆が混じる。来て良かったと思う。
「今年もよろしくお願いします」
家を出る前にも伝えたけれど何度言っても足りないくらいに切実だ。
こちらこそ、とはにかむように笑ったカイトに笑い返した。
ついでに初詣もして行こうかと、日の昇りきった境内で。
「眩しいのは日の出じゃなかった…」
駆けるように先を行くふたりを眺めて隣に伝えた感想に、呆れが占めた視線が返る。
「おい、これ以上体感温度下げるな」
唯でさえ寒いのにと顔を顰めた友人の相変わらずさに笑った。
変わり行く世の中で変わらないものがあるのもいいと思う。
「今年もよろしくお願いします」
「えー」
仕方ないなとでも言いたげな声を出す。
ついさっきアカイトに自分も同じ返事をされてたのに気付いてないらしい。
「おまえらほんとお似合いだよなぁ…」
しみじみと告げた言葉に、今更何だと旧友が笑った。
end
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