4人
「えっ結婚してたのか」
手元から顔を上げた友人の大袈裟な反応にカイトとアカイトが頷いた。
「なんだおまえら知らなかったのかよ」
「夫婦らしいですよー」
下の階に住むちびっこ達から分けて貰って来たのは、笹の枝と短冊だけでは無かったらしい。
得てきた逸話を得意げに話すふたりにはひとしきり和んだけれど。
牽牛と織姫のいきさつは漠然と認識してたそれよりもっとシビアだった。
「宇宙規模の別居婚か…」
「おいやめろ」
「だっておまえ片道何億光年掛か」
「やめろって」
短冊書けなくなるだろ、と呟いた友人の非難に笑って、灰皿へ置いた煙草の換わりにペンを持つ。
再び無地の色紙と向かい合うけど、たなばたはやっぱり子供の頃にやっておく行事なんだと思う。
「願い事、なぁ…」
「昔はいっぱい書いたのにな…」
笹に飾って星に願うような夢のある発想が出てこないのは友人も同じらしく。
カンニングに走ることにしたのか、ふたりが既に吊るした数枚の短冊を眺めて笑った。
「食べたい物と行きたいところばっかだ」
「ええ?」
「だってそういうのを書くって」
「聞きました」
仕入れてきた情報にはどうやら偏りがあるらしい。
割と直ぐ叶うって、と付け足したアカイトに友人と笑い返して便乗することにした。
ふたりの願いが叶いますように、と書いた短冊を2枚笹に括る。
文面だけを汲み取れば常に叶えたい想いと大して差は無いと思う。
けれど、とりあえずは手の届く具体的な要望から。
色味が増した笹飾りから夕飯になりそうな短冊を探した。
end
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